「ビブリア古書堂の事件手帖2~栞子さんと謎めく日常~」読了
このシリーズを2巻読み終えて、やはり推理小説というよりは青春ものに近い小説なのだと、改めて思った。
前巻に比べて栞子さんの名探偵ぶりは、少し抑えられているようにも思う。更に言えば、妄想ぶりは加速している。憶測に過ぎないと前置きをしながらも、他人の事情をかなり詳細に想像する。しかも答え合わせが無いと来ている。推理小説で言うと、探偵が証拠も無しに想像した事を真相として解明し、濡れ衣かも知れないまま終わるようなものだ。
前巻の淡い恋愛未満の感じも、今巻ではかなりハッキリとして来る。時間経過として考えると、むしろスピード・オーバーな感じだ。もう少し曖昧な関係を長く続け、事件だけを淡々と重ねて行く事が、何故できないのか?それは今作の主題が、ミステリではなく恋愛だからなのだろう。
話が逸れるが、先日、U-NEXTで映画「ビブリア古書堂の事件手帖」を見た。
正直な感想を言えば、少しがっかりした。
黒木華さんも野村周平さんも、どちらかと言えば好きな俳優だ。原作とかなりイメージは違うが、そこには不満はない。私は何も原作至上主義ではない。ヒドいと感じたのはやはり脚本だ。かなり弄っている。
映像化の都合上の問題なのか、敢えてそうしたのかは判らないが、随所に栞子さんの名探偵ぶりが打ち消される箇所が目立つ。一つだけ具体例を挙げれば、失明寸前の人間を言い当てるのは、何も署名が枠をはみ出ていただけで判断してはいない筈である。しかも酒向芳さん演じるその男は、後に弱視を偽装していた事がバレるのだ。これでは栞子は型無しではないか。
この点で言うと、まだドラマ版の方がしっかりと作られていたように思う。
剛力彩芽さんの栞子は、眼力が凄かった。映像上の名探偵は目が命。「想像してみてください」という台詞を覚えているが、原作では使われていない言葉である。このドラマを作った人が、原作小説よりもずっと推理小説にしようと意識していたのだと解る。本放送の時はあまり真剣に観ていたドラマではなかったが、こっちも改めてじっくり観てみるか。
完全に話が逸れてしまった。
ビブリアを二作読んだ感想としては、この話は恋愛中心に振れる事も、ミステリ中心に振れる事も可能なように出来ているという事がわかった。2巻目では大輔の元カノも登場して、どちらかと言うと恋愛に振れた内容になっている。
映画は1巻目の内容を描いているのだが、祖母の不倫にかなり尺を使っていて、この話が受け取り方によってはミステリよりも恋愛小説として捉える事が出来る事を証明している。
とりあえず、2冊読み終えたところで、しばらくビブリアは読まない事にした。今はミステリ中心に読んで行く事に決めているので、次からの何作かは別の小説になるだろう。
2023.3.6