【#ハイつま】番外編:ハイパーカジュアルゲームで『ヒットする』とは?
ハイカジ遊んでますか? どうも、浮雲です。
今回の【#ハイつま】は、再び番外編です。
テーマは「ハイパーカジュアルゲームで『ヒットする』とはどういうことなのか?」です。
といっても、数字の話とかではなく、ゲームデザインをするにあたっての目標設定の話がメインになりますので、予めご了承ください。
■【#ハイつま】番外編のターゲット
主に以下のような方にとって、学びや気づきが得られるものになるよう意識しています!
・ハイパーカジュアルゲームに興味があるゲームデザイナー/開発者の方
・『ヒットってなんやねん』と思っている方
・ゲームデザイナーの視点や思考に興味のある方
なぜ急にこんなテーマを?
【#ハイつま】をはじめてからここまでハイパーカジュアルゲーム5タイトルを紹介してきましたが、その中で『ヒットしている』的な表現をたびたび使ってきました。
が、ハイパーカジュアルゲームは【課金モデル】のゲームとは異なり、ストアのセールスランキングに並ぶことはありません。理由は単純で、ゲーム内に課金要素がない、もしくはあっても規模が小さい(課金収益が大きくならない)からです。
とはいえ、一部にはしっかりと課金での収益を上げているタイトルもあります。例えば、Playgendaryの『Bowmasters』なんかがそうです。
『Bowmasters』は、同じフィールドで向かい合って、矢(のようなもの)を撃ち合う対戦ゲームです。動画を見てもらうと一目瞭然ですが、ダメージを与えたときの部位破壊などのゴア表現が特徴的なゲームデザインとなっています。
ゲーム内課金に関しては、一般的な「広告非表示」以外にも、「コイン/ダイヤ」が課金で購入できたり、「スターターパック」や「サブスクリプション」などでしか手に入らないキャラクターがいるなど、多様な課金導線が存在しています。
また、ハイパーカジュアルゲームでの広告ビジネスをおこなっているFacebookが有するFacebook Gamingは、2021年のハイパーカジュアルゲームに関する予測として「ハイブリッドカジュアルモデル化の発展」を挙げていたりもしますので、今後は課金要素ががっつり入ったタイトルが増えてくる可能性もあります。
(一部抜粋)
ハイパーカジュアル市場の成熟に伴い、定評のある開発会社は別の選択肢の模索や、より適切な収益化モデルが必要かどうかの検討に着手しました。
ハイパーカジュアルゲームの開発会社がアプリ内購入を促す機能の導入によって収益化を強化せざるを得なくなる中、2021年はハイブリッドカジュアルモデル(ハイパーカジュアルプレイヤーを収益化できるゲーム)が飛躍的な発展を遂げると予想されます。
と、話が逸れましたね。
そんなこんなで、今回このテーマで記事を書こうと思ったのは、『ヒット』という言葉で一括にするのではなく、『コンシューマーや課金モデルのアプリゲームでいうヒット』と『ハイパーカジュアルゲームで目指すべきヒット』は別物ということを理解しておかないと、ハイパーカジュアルゲームやハイカジのマーケットを正しく見れないなと思ったからです。
【便利な言葉】は恐ろしい(マジで)
普段からなんの気無しに使ってるような言葉なんだけど、いざ「説明してください」と言われると難しい――。
そんな言葉って、意識していないだけで思った以上に身の回りに溢れていたりするものです。
一見話が通じているように見えても「自分は【A】というつもりで使っていたのに相手は【B】のつもりだった」みたいなことも少なくありません。
この場合、どちらかが言葉の中身を説明する機会がなければそもそも認識がずれてることに気付かないままのケースもあるので、さらに厄介です(後から気付いたときにはすでに事故ってるパターン)。
小規模/大規模に関わらず、チームで行うゲーム制作の現場においては、これは時に致命的なトラブルを引き起こしかねません。
なので、ゲームデザイナーやディレクターなどの企画職は特に『言葉に敏感・丁寧』である必要があります。
とりわけ、私自身も【便利な言葉】として気を付けているのが、『横文字』や『カタカナ言葉』です。
ここでいう【便利な言葉】とは、それこそ【ゲームデザイナー】とかもそうだったりしますが、例えば【UI/UX】とか【イテレーション】など、
「ニュアンスはなんとなくわかるし、相手にも通じてる気がする(けど説明するとなると難しいし、相手にも確認したことがない)」
というような言葉を指します。
皆さんも、なにかしら普段の業務や生活の中で使っているなと思い浮かぶ言葉があるのではないでしょうか。
いっそ良く分からない横文字とかだったらまだいいんですが、中途半端に雰囲気で理解できた気になっちゃうようなものだとマジで大惨事になる場合があるので、個人的には危険物指定したいくらいです。
なので、個人的に行っている対策としては、
・チームで確認する企画書などのドキュメント類では、抽象的な表現は避けて、曖昧な場合はそのプロジェクトにおける定義を明示化する
・キックオフMTGの際に、チームで共有すべき課題や目標を最初に確認して認識のずれが起こらないようにする(その後もことあるごとに)
みたいな感じで、そのプロジェクトにとって最適な『定義付け』を行うようにしています。
それ、本当に『ヒット』してる?
前置きが長くなりましたが、表題の『ヒットする』ということについて。
一口に『ヒット』と言っても、それこそ人の数だけ解釈があります。
『パッケージ販売モデルのコンシューマータイトル』を例にとって、思いつくまま書きだしてみるだけでも、
1.xx万本以上売れた!(売り上げ本数)
2.xx億円以上の売上!(売上金額)
3.xx億円以上の収益!(収益金額=売上ー開発宣伝費)
4.アニメ化が決まった!(マルチメディア展開)
5.SNSでバズった!(口コミ/話題性)
などがあるかと思います。
さらに、この場合に『ヒット』の認識がずれるケースの例としては、
・事業責任者(会社)から『ヒットさせよ』との指示が出た
・開発宣伝費がっつりかけて、「100万本」を売り上げた
・ただし、開発費は回収できていないので収益としては赤字
という状況が考えられます。
この場合にどうなるかというと、
・開発宣伝費の情報を持たない開発メンバーは『ヒットさせた』と認識
・事業責任者(会社)やリーダー以上のレイヤーは赤字であることを把握しているので『ヒットさせた』とはいえないと認識
みたいなずれが生まれます。
よって、このケースでの問題は以下に集約されます。
・『ヒット』という【便利な言葉】で指示したために、基準が「販売本数」なのか「収益」なのかの認識に齟齬がうまれた
この問題に対する解決策は非常にシンプルで、『ヒット=xx億円以上の収益!』と一言明記すれば済みます。
上記の例はだいぶデフォルメしてるので、実際にはこんな雑な指示の出し方はしないと思いますが(しませんよね?)、誰でも知ってる『ヒット』という言葉でも状況や立場、持っている情報の質と量によっては簡単に齟齬がうまれるくらいなので、理解があやふやな言葉だとそれがさらに大きくなることは想像に難くないと思います。
ハイパーカジュアルゲームで『ヒットする』には?
当初想定していたより長くなりましたが、ようやく締めのセクションです。
前段で書いたように、『ヒット』という目的を達成するためには、その【達成要件】を明確に定義しておくことが大切です。
これをハイパーカジュアルゲームに当てはめてみると、ざっくり以下の4つの【達成要件】を実現することが必要になります。
・IAP(アプリ内課金)ではなく「IAA(アプリ内広告)」で収益をあげる
⇒前提となるビジネスモデルを正しく理解しておく
・広告を多く見てもらうために、「長く」遊んでもらう必要がある
⇒継続率が高いゲーム性を実現できる【ゲームデザイン(メカニクス)】
・一人当たりの収益額は低いため、「多くの人に」遊んでもらう必要がある
⇒全世界・全年齢に受け入れられる【テーマ/モチーフ】
・多くの人の目に止まるために、「興味関心を引く」動画広告を配信する
⇒見た人がダウンロードしたくなるような【動画広告のクリエイティブ】
上記に基づき、【#ハイかじ】では主に【メカニクス】と【テーマ/モチーフ】について、ゲームデザイナー視点で気づいたことや優れている点をピックアップしてお伝えしたいと思いながら書いている次第です。
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以上、ハイパーカジュアルゲームで『ヒットする』ということについて、少し深堀してみました。
作るものがゲームなので、ついつい【ゲームデザイン】ばかりに目が行きがちだと思いますが、ハイパーカジュアルゲームではなによりも「たくさんの人の目に止まり、受け入れられること」が不可欠です。
【売り切りモデル】【ゲーム内課金モデル】とは達成要件が異なるということに気づくことが重要なので、今後もそういった気付きを得られる記事を書いていけるよう精進します。
それでは、次回の【#ハイつま】をお楽しみに!
※何か質問や聞いてみたいテーマがあれば、以下の質問箱からどうぞ!
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