社会のためでもある生涯学習(生涯学習の理論と発展)
大学院で学ぶ「学習のデザイン」。今回は生涯学習に関する授業の共有です。
今年から「社会教育士」の資格を取ることができるようになりました。自分は教員免許をもっていませんが、これから教育分野に関わるうえで持っておくとよいかと考え、資格必要な単位を取得するために授業を受けることにしました。
そのため前期の授業が大変になって、研究の進捗が大変ですが、これはこれとして、ちゃんと学びます。
社会教育とは何か
教育の領域は大きく分けて3つあります。
学校教育
家庭教育
社会教育
みんながパッと思い浮かべる教育は「学校教育」かと思います。でも学校だけですべて教育が網羅されてるわけではありません。親が子に教えること、お片付けとか挨拶とかは「家庭教育」に含まれます。ここを学校に過度に押し付けるような風潮は、区分を超えた問題だといえます。
そして、学校でも家庭でもない領域が「社会教育」です。これは明治期にうまれた日本独自の概念のようです。(英米圏は学齢期をすぎた大人の教育としてAdult Educationが使われていた)
社会教育法(昭和24年制定)の第2条では、このように定められています。
ざっくりいうと学校以外すべて。
たとえば会社での研修、資格取得の勉強、ピアノなどの習いごと、地域での勉強会などは、すべて社会教育に含まれます。
小学校・大学・幼稚園などの教育機関は学校教育に含まれますが、専門学校や保育園などの機関は含まれていないので、社会教育に該当するということです。図書館や公民館などの施設も社会教育の区分です。
こう整理してみると、学校以外にも教育の機会ってたくさんあるんだなということに気づきます。それが社会教育という領域です。
生涯学習とは何か
社会教育に含まれる代表的な学びの1つが、生涯学習です。この言葉、よく耳にしたことがあるかと思います。
生涯学習はポール・ラングランという人が1965年にユネスコで「学校での教育だけをでなく生涯を通じて学ぶこと」と提唱しました。教育史で触れたように、学校の概念ができたのは近代以降で、それ以前はむしろ学校が教育の基本という考え方はありませんでした。
でも現代になって生涯学習があらためて強調されている背景には、こんな要因が考えられます。STEEP分析で整理してみます。
Society : 定年や老後の期間が長くなった(100年人生)
Technology : 技術は常に進化し続ける
Economy : ビジネスの変化が速く学校で習ったことは古びてしまう
Ecology : 環境問題や地域格差は向き合い続けるべきテーマ
Politics : 国は住民一人一人の主体性が必要
生涯学習=老後や余暇の生きがい、といった印象があるけど、こう書いてみると学び続けないとヤバいという空気感が伝わります。学校で学ぶ内容は人生のほんの一時期だけで、一生涯使い続けられれるわけではない、という危機感が表れている側面もあります。
生涯学習と社会教育の関係
生涯学習は主に3つの分野があります。
自己の充足:読書、習い事、ボランティア、旅行、など
生活の向上:金融教育、料理、まちづくり、など
職業能力の向上:研修、資格取得、キャリアシフト、異業種交流、など
読書・金融教育・企業研修などは受けているかどうかで、個人の生活に結構大きな差が出ます。これらは任意でよいのか、もっと学ぶための環境や機会を持つべきなのか、考えさせられます。
というのも、上にあげた学習は個人のためでもあるけど、同時に社会が成り立つうえで割と大事な知識にもなるからです。
仕事の能力があがることはもちろん、家庭でのお金の使い方を学ばないと、自国通貨が強くならなかったり、経済格差が広がる社会問題にも発展します。自己の充足が満たされないと、精神的な疾患につながったり、文化の衰退にも関わります。
なので生涯学習に取り組むことは、社会教育に直結します。
学んだこと
僕はいま大学院で教育を受けているけど、義務ではないし就職のためとかでもないので、自分では生涯学習をしている感覚です。
また、僕の研究テーマは学校教育で、実のところ社会教育自体には強い関心は持っていないものの、人生というスケールで学ぶことを考えてみると、学校教育だけでは網羅できない、ということがよくわかりました。
学校教育の限界を知ったうえで、学校教育で何が求められるか、学校の外の社会教育でやるべきことは何か、ということをこの授業を通じて探索してみたいと思います。
今日はここまでです。