シンガポールやインドから学ぶ、学習のアップデート(教育サービスの現状と未来)
大学院で学ぶ「学習のデザイン」。今回はデジタルの取り組みについて、アジアの事情から学びます。
日本とデジタル
デジタルの時代ですが、世界デジタル競争力ランキングで、日本は32位と年々順位を落としています。アメリカやヨーロッパが上位に入る中で、シンガポール・台湾・韓国・中国は日本より上位にきています。
また、ランキングは日本より下ですが、インドの優秀なエンジニアが世界的なIT企業のCEOなどに就任していることは有名で、実質的には強いデジタル力を持っています。
日本の課題は、特に経営層に対する浸透のようです。ビジネスアジリティや規制への枠組みで遅れをとっているようです。
シンガポールとデジタル
シンガポールは、学び続けることの必要性を国レベルで実行しています。
政府主導でリスキリングに対する費用支援と技能証明を行う『Skills Future』という職業訓練プログラムを、2014年より実施しています。
LinkedInとMicrosoftによるSkills Pathは、学歴よりも実力で評価される、スキルベースによる企業採用が行われています。
Future of Work Report (Nov. 2023)では、2030年に仕事のスキルの65%が変化して、47%の専門家がAIはキャリアを前進させるのに役立つという見解を示しています。
最近Skills Futureでこのような発表がありました。世界は20年で大きく変わっている、20歳に学んだことが40歳では通用しなくなる社会では、 大人になっても学び続けることの必要性を、国が意識しています。
シンガポールは経済発展をしてるとはいえ小さい国です。国が生き残るための戦略を考えて、デジタルに投資していることと比較すると、日本はだいぶ危機感が足りないとも思えます。
インドとデジタル
インドは、経済や社会発展とデジタルの関係から学ぶことの大切さを示していることが、若者の活力につながっています。
転換となったきっかけは、モディ政権のもと2015年の大きな経済発展につながった政策のMake in Indiaと合わせて、Skills Indiaのイニシアチブを発足したことです。この中でデジタル強化の取り組みが今日につながっています。
インドがデジタル市場で大きな飛躍を遂げた理由は3点あると考えます。1点目は数学に強い国であったこと、2点目は製造業が日本ほど成熟しなかったためデジタルへの一足飛び(リープフロッグ)に踏み出せたこと、3点目は人口の多さと社会課題のニーズがデジタルに直結したことです。つまり、デジタルを学べば未来は明るいという社会が示されています。
インドは平均年齢が28.2歳 と日本よりも約20歳若く、人口は日本の10倍以上の14億人です。経済発展も著しく、18歳意識調査でインドは「自分で国や社会を変えられると思う」と回答した割合が最も高い国でした。対して日本は最下位です。
製造業に依存しない構造は、インドだけでなくシンガポールも同様です。でも中国や韓国のような製造業が強い国でもデジタルにシフトができていることを考えると、日本は言い訳できません。
5年前にインドのビジネスモデルに興味を持って調べた、noteの記事を紹介します。デジタルや経済発展の考察に割と共通点があります。
あと、もう1点インドの特徴あげると、デジタルの職業にはカーストに関係しないということが言われて、勉強して努力すれば打破できると考えるインド人が多いことも理由にありそうです。(ただ実態はそれほど単純なことでもないようです)
いずれにしても、未来への希望が原動力となっているといえます。
成功体験による停滞
反面、日本は景気後退の状況を反映してか、若者の意識は相当低いです。
18歳意識調査で日本は軒並み低い数値となっていて、若者は自身が社会を変えられるとは思っていないうえ、国の役に立ちたいと考えてない割合も突出して高い結果が出ています。
製造業の成功体験が足かせとなっていることと合わせて、当時活躍した前世代の価値観が根付いてしまっていることが要因ではないかと思います。
学校教育では、年配の教員はデジタルの影響度を的確に理解している人が少なく、若い教員は日本が活躍していた時代を体感していません。加えて日本は海外とのやりとりが積極的ではないため、世界で起こっていることや時流を客観的に捉えることができていません。
一方でスポーツの分野では、野球・サッカー・バスケ・卓球など、国際競争力の高い選手が増えています。これは上の世代の押しつけの影響がなく、世代交代の新陳代謝ができているから?ではないかとも思います。
学んだこと
シンガポールは大人でも学び続けることを、インドは学ぶことが社会に役立つことを国レベルで実行しています。
日本のこの先の教育で大切なことは、過去の延長上にある考え方や施策で学びを推進するのではなく、時流に合わせてしがらみを受けずに没頭できる学習環境を提供することだと考えます。
そのための方法として、例えばデジタルやグローバルビジネスに深く関わっている実務家教員を積極活用したり、インドやシンガポールなどのアジア諸国の学生と交流を持つ機会などがあげられます。ただし、アジア諸国は日本にもうあまり魅力を感じていないので、日本は何を差し出せるか?を考えることが不可欠です。
日本はこれまで明治維新や戦後でアンラーニングをして、時代に適応した成長をした国です。いまが次のタイミングだと捉えて、大きく変わる時期に来ているのではないでしょうか。
デジタルがどうかというよりも、世代間の構造的な問題が教育に大きく影響している視点に気づいたのが今回の学びです。
今日はここまでです。