学歴とオープンバッジ(教育サービスの現状と未来)
大学院で学ぶ「学習のデザイン」。ここから数回は春季講座で受けている授業で、教育業界でいまどういった変化が起こっているのかを紹介します。
日本の教育の偏り
世界から見ると日本の教育はこのくらい変わっています。
25歳までに大学に入る割合が99%(世界平均は83%)
大学にいる年齢幅はほぼ18-24歳(世界はおおよそ20-30歳)
成人後の自分の意思で入学を選択した人が少なく、早い年齢で学びを終えてしまっている、といえます。つまり日本は、人生のなかで自らが選択して主体的に学ぶという行動が少ないといえます。大学も高校の延長から入る義務教育の延長にあるような流れです。
他の国では、高校から大学の間にギャップイヤーがあったり、一度就職したあとに大学に入り学び直す人が多くいることから、日本よりも生涯のなかで学びを考えていると捉えることができます。
学歴や履歴書の見直し
そんな背景もあって、最近は社会人でも学び続けよる活動が推進されています。政府がリ・スキリングという言葉をさかんに使っていたのも、このような背景があります。
リ・スキリングは、企業で活躍したり、転職で優位になったりすることにつながるわけですが、ここで1つの問題があります。
それは「履歴書にどう書けばよいのか?」ということです。
いまの日本の履歴書は学校機関に所属していたことを書くスタイルが主流です。たとえば「20xx年〇〇大学〇〇学部卒業」といったように。この延長上で何かの研修を受けましたといったことを書いても、人事や採用担当者にはまともに見てもらえないでしょう。
社会人になってからも自発的に何かに取りんだか?ということが、その人の成長に大きくつながるという実感知は自分にもあるのですが、どうも履歴書という書式の中ではそれを示すことができません。
ただし、だからといって経験したことを自由に示せる書式だったらよいかというと、そうではありません。経験軸でつくられる履歴は金で買えるという問題は、前にペアレントクラシーの内容で紹介しました。
なので、大学以外の学びであっても、学歴として何かしらの証明や信頼を示せることが求められます。
オープンバッジとは
その一つの解決策となるのが、オープンバッジという仕組みです。発行している機関の説明はこちら。
簡単にいうと学んだことのデジタル証明書です。
世の中にはいろんな証明があります。国家資格だったり、英検のように広く認められている証明だったり。一方で誰が認可したのかよくわからないあやしい資格や証明もあります。オープンバッジはそういった証明の質を担保した団体です。
このオープンバッジには3つの特徴があります。
学んだ内容を公的に証明できる
SNSやメールで簡単に共有やアピールができる
ブロックチェーン技術を用いており情報が改ざんされない
デジタルならではの利点を活かした使い方です。これによって、そもそも紙で書く履歴書ではなく、自身の学びの歩みをいつでも正しく伝えることが可能になります。
デジタル庁もオープンバッジを政策として取り組んでいます。
オープンバッジは世界共通の仕組みですが、他国に比べて日本はまだ普及が遅れているようです。今後、リ・スキリングの推進にともなって広まってくるかもしれませんので、今のうちからチェックしておきましょう。
学んだこと
大学というブランドに依存しないで、年齢に関係なく何を学んできたか?という中身で勝負する学歴の考え方は、とても共感できます。
オープンバッジは名前の通りオープンなので、従来の勉強的な学びだけでなくより広い領域で学びを資格として示せる可能性があります。自分の研究テーマの「創造性」は、従来の学校教育や学習評価に当てはめることが難しいので、オープンバッジに期待します。
一方でなんでもかんでも資格化されてしまうと、オープンバッジ自体の信頼性低下になるので、学習の質の担保が大切になるとも思います。
今日はここまでです。