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時代おくれにならないデザイン教育のあり方(生涯学習の理論と発展)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。今回は社会教育関連の授業で、生涯学習の理論と発展の最終レポートを紹介します。

前と同じく、デザインを対象に生涯学習を考えてみました。

古くなる知識

どの分野でもいえることですが、同じ職場や分野でずっとい続けると、自分が持っている知識やスキルだけでこなすようになり、新しい知識を取り入れようとはしなくなります。

デザインでもこの影響は大きくあります。

例えば、トレンドやスタイルはわずか数年で大きく変わり、手書きをしていた製図のスキルは3DのCADツールに変わり、製造技術はどんどん進化し続けています。持っている知識や表現方法は、簡単に古びます。

古くなってしまう理由

この関係を図にしてみました。

横軸を時間のながれ、縦軸をデザイン業界の発展とします。

時間とともにデザイン業界は発展し続けるので、必要な基準値は上がっていきます。

自身の時間軸に当てはめてみると、最初は工業デザインから、そこからソフトウェアやUI領域や、デザイン思考や体験のデザインなど、数年ごとに新しい知識やスキルを取り入れていました。(30年の間の変化はすさまじいものです)

デザインを学び始めたとき、はじめはゼロの状態ですが、学校で必要なことを体系的に身につけて伸ばしていきます。そうして卒業してから数年くらいの実務経験で、このくらいは必要という基準値に近いところまでいけるようになります。

が、ずっと右上には伸びません。社会経験5年くらいのところで、やっていることが変わらないと慣れてしまい、持っている知識やスキルを使いまわしてこなすようになります。

例えばデザイン思考のような考え方が広まってきても、自分には関係ないと思えば、取り入れることはありません。

これをずっと続けると、古いままのデザイナーになってしまいます。

ここで教育に目を向けて、課題を考えてみます。

学校でデザインを教える教育者の多くは、社会経験10年以上のデザイナーなのですが、今の業界に必要な知識やスキルを持たずに、古いままのデザイン観で先生になっている人は少なくありません。(あくまで個人の体感値ですが、学校で教えていることと、社会で求めていることとのギャップを感じることがあります)

さらに学校の中にいると、実学的であるデザインはますます業界の新しいことに触れられず、自身の成長の機会が失われてしまいます。(これも学校や先生次第ですが、刺激を受けない環境だと慣れてしまいがちです。)

そうするとどうなるか。学生は社会で必要とされているデザインよりも古い知識やスキルしか学べない、という状況が起こります。これを繰り返すとデザイン業界全体が伸びないことにつながります。

この構造の根本的な課題は、学校を卒業したあとにデザインの生涯学習がないことです。

古くならないための社会教育

そうならないために、社会教育としての施策を考えてみました。

学校を卒業後、社会に出て5-10年くらいのタイミングで、学び直しをする仕組みを持ってみてはどうでしょう?

そこでは、第一線で活躍しているデザイナーが社会教育士として、いまのデザインを教えられる講師役になります。主催する組織は、特定の企業だけではなく、学校が企業にはたらきかけたり、デザイン協会(JIDAなど)が主体となって取り組むような枠組みが必要です。

そのままにすると自然と古びてしまう状況に対して、半強制的にでも数年ごとに学び直しの場があれば、時代や社会とずれない知識や技能を持ち、活躍しつづけられるのではないかと考えます。

社会に出ると、学びは自己責任になります。でも、新しい学びやアンラーニングを自身で取り入れるのは簡単なことではありません。大人の学びにはもっとサポートが必要だと考えます。

学んだこと

自身の研究テーマは学校教育なので、生涯学習には正直なところ、ほとんど興味を持っていませんでした。

でも、今回このように考えてみたことで、生涯学習は定年後の個人的な興味だけではなく、自身の専門領域と向き合い続けるために欠かせないこと、だと気づくことができました。いや、めっちゃ大事です。

日本は学校を出たあとは学ばなくなると言われていますが、生涯学習という言葉が、人生においてもっと必須的な意味合いに捉えられると、意識も変わってくるのではないかと思いました。

例えば印象が変わるよう、ネーミングしてみるのはどうでしょう?

今日はここまでです。


デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。