デッサンってどうやって描いてるの?
デッサンの制作過程を動画撮影しました。
前回「デッサンってWebデザイナーに必要?」というテーマで書かせてもらいましたが、デッサンというテーマはノンデザイナーの方には見向きもされない話題かなと思ったこともありましたが、メルマガで「どの記事面白かったですか?」とアンケートを取ると必ず上位に来たりもするので、そうでもないのかなと思います。
ただやはり「デッサン」って何度言葉で連呼してても描いたことない方にはどんなものかイメージしづらいものではあるかなと思い、10年以上のブランクも顧みず描いデッサン(鉛筆画)を描いてみて、その過程を動画と解説と図解でお伝えいたします。
動画については描き始めてからカメラ回したりで(出し始めの15分くらいないですが)それ以外は迷ってる時間以外の工程は最低限入れたつもりです。美大入試とかの静物デッサンや石膏デッサンとは描いている紙や画材も少し違ったものも使ってますが、やってる事は大体同じです。よければ触りだけでもご覧頂き大まかにデッサンのイメージを掴んでもらえればと思います。
※Youtubeにデッサンチャンネル?として公開してますので面白ければ「いいね」ボタン、チャンネル登録お願いします。不定期ですが次また描いてみます。
まず今回のモチーフですが、モチーフを並べるスペースなどなかったので、写真を元に描きました。↓元の写真はこちらです。
「ペーパームーン」という1973年の映画のワンシーンで、9歳の少女(テータム・オニール)がタバコをくわえてるということで、当時かなり話題になった場面のものです
写真を元にデッサンするということについての可否ですが、もちろん目の前にモチーフがある方が(モチーフの裏側から見たり出来るので)絶対に良いですよね。
しかし現実的になかなかお家に石膏像を置いたり複数の静物を配置しておくスペースなどないでしょうから、無理せず、写真をもとにデッサン練習するのは全然アリだと思います。形に拘りすぎて続かないのが一番バカらしいので。
デッサンで、自分の作品を疑う(見直す)力を鍛える
前回の記事で書けなかったのですが、デッサンを練習する過程で、私達はデザインをする上でとても大切な力をを身につけることができます。どんな力なのか?わかりますか?
そのまんま見出しの通りですが(笑)
別の言い方をすると、自分で自分の作ったものを疑う力、でしょうか?
デッサンを描いている動画を見てもらうと、写っているのは鉛筆を走らせる・こすって鉛筆を画面に定着させる・消す、等々の作業行為だけで、止まっている時間、元のモチーフと描いた絵を見比べている時間等は、映っていません。
そういう時間は全て動画上でカットされてるので、なんだか凄い調子よく何の迷いもなく描き進めていくように見えますが、そんなことはありません。一定時間描いて、見直して修正、また描いて見直す、それの繰り返しです。
例えば今回のように写真を元にデッサンの練習をする時、写真と描きかけのデッサンを並べてじっと見比べていく、という愚直なやり方も含めて、何通りもの「チェックフィルタ」をかけていイメージですかね。
だからデッサンって大切なんです。逆に言えばデッサンの経験があまりないデザイナーの方は、自分で自分のデザインを見返し、時には疑って見る事をしているか?特に気をつけてみると良いかもしれません。
ではデッサンをする上でどんなポイントをチェックしていけば良いデッサンが描けるのか?イメージしやすいように、具体的にひとつひとつご説明していいきましょう。
「形が狂っていないか?」を見直す
デッサンで「形が狂っていないか?」というのは、とても大切な部分で何度も見返さないとならない、最たるチェック項目です。
「形の狂い」とひとことで言っても本当は、「例えば石膏デッサンなどでは、人体として間違った骨格になっていないか?」という意味も含まれます。でもここではまず
ネガティブスペースが正確に描けているか?見直す
デッサンを描いている人が(デッサンとモチーフの)どんなところを見比べているか?具体的に考えてみますと、描こうとしているモチーフそのものの形(①の白い部分)が狂っていないか?を見るのはもちろん、①以外の形、ネガティブスペース(②の黒い部分)も同時に見てます。
①の部分が通常見ている「モチーフ自体の形」で、②のネガティブスペースは、日常生活であまり意識しない形でありますけど、デッサンを描くときはこの(外側の)形を意識して見て、ネガティブスペースの形(シルエット)は正確に描けているか?を見直していきます。
ネガティブスペースの形が正確に描けているか?意識して見直すことで、モチーフ自体の形を描いた上でもう一度チェックをかけるという意味でも、より厳しい2段階のチェックとなりますし、ネガティブスペースはなにもない空間で、形だけを見直すことがしやすく、目鼻口が含まれるモチーフ自体の形合わせよりもニュートラルな感覚で形を見直せるわけです。
またいきなりネガティブスペース全体の形を(モチーフと自分の絵で)いっぺんに見比べるのは難しかったりするので、上の図のように、②left(黄色)と②right(紫色)のネガティブスペースの形に分けて(モチーフと自分の絵で)見比べたりもします。やはり小さく分けて見た方がより正確に見比べられるということですね。
ここら辺は自分が見比べやすいスペースをチョイスしてやりやすいようにチェックしていけばいいです。こうしなければと言う決まりはもちろありません。
またこれだけではなく、例えば顔の中のシルエットの形はどうか?モチーフ通りに描けているか?など、もっと細かい部分の形(シルエット)をチェックしていったりもします。
下の図で言うと赤色部分のシルエット部分などでモチーフと描いたデッサンとで違った形になっていないか見比べてます。(この目立ったシルエットの形、どこを選ぶかについては目を細めて人の顔など見てもらうと彫りが深くて暗くなっている目立つスペースなど見えてきますので試してみて下さい)
ここら辺は説明上ひとつひとつゆっくりと取り上げてますが、実際に描いている最中は、見ている部分を素早く切り変えて、色々な場所のシルエットがモチーフと合っているか?瞬間的にチェックし、間違っていればすぐに修正したり、もう一度ネガティブスペース合ってるか確認し直したり臨機応変に見直してるので、デッサンを描いているのを横で見てても多分描き手が何をチェックしているか?ほとんどわからないかもしれません。
デッサン上手い人に「デッサン描くときにこの方法を使うか?」と聞くと「やっていない」「初めて聞いた」と答える方もいますが、無意識な作業すぎてやってる本人も気がついてもいないだけで、多かれ少なかれ実践している気がします。
縦横線をしいて位置関係をチェックする
縦横線を基準にモチーフの離れた要素位置を確認するチェック法です。目分量だと思い込みで狂うので鉛筆などを自分とモチーフの間に突き出して律儀にやります。慣れてくると縦横で3回くらいで済みますが
また、チェックする時、何と何を見比べればよいのか?と言えば、何でもいいですが、同じ位置、近い位置に見える部分を見比べてみるとわかりやすいでしょう。↓ここで言えば左肩と右肩の位置ですね。そしてもう一歩踏み込んでみて、例えば人物の場合、体の重心がどっちに傾いているか?等がわかるようなポイントだといいかもしれません。この写真でいうと「右肩のほうが少し落ちているから、右に体重をかけてるボディバランスになっている?→右手でタバコ持っているからか」等モチーフの人体バランス・状態の理解が進むようにカタチを取っていければ最高です。
横だけではなく、縦の位置関係もチェックします。画面サイズは縦長なんで、位置関係もずれがちです。横を合わせるよりしっかりとチェックした方が良いでしょう。ここでは目尻と右手の肘との位置関係をチェックしてます。距離的に離れてるのでここずれてると、大きくカタチが狂っちゃうな、というポイントを見比べると良いでしょう。
ここまで書いてきたことをちらりとまとめてみますと、、、
・モチーフ以外のスペース(ネガティブスペース)のチェックをする。
・目の形や目立つシルエットの形も時々チェックする
・縦と横の位置関係をチェックする
ということになります。
今更ですが、ここらへんまとめてチェックできる「デッサンスケール」という道具を思い出しました。美大予備校とかで、デッサン漬けの毎日を送った方は多分見たことあるでしょうが普通の日常生活ではまず見ないものだと思いますのでご紹介しておきますね(笑)
出典:https://dessinlaboratory.com/tool/perspective-device.html
こちら見ていただくと、今回長々と書いたチェックポイントが何であるか?何をチェックすることで形が正確に取れるのか?わかってもらえると思います。これをモチーフに向けてかざして覗き込むわけですね。ネガティブスペースも自然に分割してチェック出来ちゃいますね。
「立体として描けているか?」を見直す
デッサンとは、3次元の立体物であるモチーフを2次元の紙の上に定着させる」という大嘘をつく行為と言えます。
描いている人はとにかく、一つ一つのモチーフが「立体なんだ」と常に意識して描かないとなりません。モチーフが人体の場合、目鼻耳口とそれぞれのパーツが、立体に見えるように描けているか?常に見直しながら描いていくわけです。
上の赤線部分のように、頭は後ろへ回り込んでいて、タバコは円柱の形で手前に突き出ている、西洋人のまぶたは薄いので二重になっている等々、とにかく立体としてどうなっているか?を観察して描いていきます。デッサンはへのへのもへじではまずいわけです。
立体物を立体物のように描く時に、一番大切なのはモチーフの中に隠れているカタチを見極めて描く事だと思います。
例えば、この女の子の頭部で言えば、頭蓋骨のカタチ、が中に隠れていますよね。基本形態で言えば「球」ですよね。頭蓋骨(球)→頭皮→髪の毛、と覆われているので髪の毛の流れがこんな風に曲線に沿って揃ってらように見えてくるわけで、もし頭蓋骨が立方体ならば、断崖絶壁の滝の水の流れのような見え方で、角張ったカタチに沿って髪の毛が落ちてくるように見えてくると思います。
実際ここまで極端な話にはならないでしょうけど中の形を意識せずに描くとどんな立体物なのか、段々と不明瞭になってしまいます。描いている人が理解しないで描いてるので、まぁそりゃそうなりますよね。
頭だからわかりやすかったと思いますが、例えば手首の場合ですと、とりあえず手首の関節どうなってたかな?と今でも自分の左手を触ってみます。解剖図を見て骨の位置まで見ないでいいですが中のカタチを意識して描く事を忘れないで下さい。これだけででつさが見違えるよう立体感が出てくることもあるのです。
最後に。デッサンで学ぶデザインの一番大切なスキルとは
ここまでで全ての工程を説明出来たか?わかりませんが何となくデッサンという作業の全容が、少しでも伝われば嬉しいです。プロが教える「美大いらずのデザイン講座」というメルマガを12年書いてきた身からすると言いにくいですが、デッサンに関して言うと、美大生や美大予備校生に大きなアドバンテージがあります。
何故なら、美大に合格する迄に彼らは1年間に200枚くらいは平気で描いているからです。そして彼らは
デッサンの経験がない人を脅かしてるわけではありません。この記事をここまで読んで頂き、動画も少しでも見て頂けたなら、デッサンをする上で1番大切なスキルが何であるか、お分かりになったと思います。
別の言い方をするなら、彼らが何枚もデッサンを描く理由ですね。
全て、今まさに皆さんが向き合っているデザイン制作に必要不可欠な力ではありませんか?そうなんですね、やっぱりデッサンとデザインは地続きで、同じ道を歩いているわけです。そうでなければ何十年もデザイン科の入試科目からデッサンなんて無くなっているはずですよね。
もしあなたにデッサン経験がないのであれば、彼らが作り上げてきた作品経験をまず知って彼らに負けないくらいデザイン作品を作ればいいだけです。
デッサンとデザイン、どちらが難しいのか?比べるものでないかもしれませんが、お金を頂いてする仕事の方がまぁ基本的には難しいと思います。
ですから20個くらい、仕事で引き受けるレベルのデザインをこなして次の仕事の依頼も来るくらいで有れば、それはデッサン200枚作った人に比べても引けを取らないのかもしれません。
幾つ作れば良いか、というのは一つ一つの作品の濃さにもよるのでわからなかったりしますが、とにかく美大合格を目指して(合格出来なかった人も含めて)何百回も作品を作ってきた人達がいることを知って、同じくらいか、それ以上自分はデザインが好きだぞ!と自信を持って言えるくらいに、作品を作っていきましょう。
今回、デッサン制作の全容について、
ということをお伝えしたつもりです。デザインを作る過程で少しでも思い出して頂けたら有り難いです。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?