行為の価値について(1)
1.元首相暗殺事件について
数年ほど前に、我が日本国の元首相が白昼堂々暗殺された。この事件は世界的に大きく報じられ、日本では連日ニュースや新聞、ネットメディアでさまざまなことが論じられた。
当初は先進国の首相経験者が凶弾に倒れた悼ましい事件として報じられていたが、容疑者の同期を明らかにしていくうちに徐々に見方が変化してきている。
政権とカルト教団との関係が大きく取りあげられ問題視されるようになったり、五輪での不正な金銭の流れが発覚したり、しかもその2つに被害者が(大なり小なり)関わっていたのではないかということが明らかになってきたからだ。
私たちは自分がした行為について責任を負っている(と社会ではされている)。
容疑者がした行為はどのように評価すべきか。また行為の善いと悪いの基準はどこにあるのか。
2.エンスラポイド作戦
第二次大戦中、ナチスドイツはチェコを占領しており、そこにはラインハルト・ハイドリヒという恐るべき人物がいた。金髪の野獣とも言われた彼はホロコーストの超推進派であり、ステレオタイプな悪しきナチスドイツ軍人の典型だった。
ハイドリヒは、最期には彼を恐れたイギリス政府やチェコ亡命政府によって暗殺される。(エンスラポイド作戦)
もちろん怒ったヒトラーは、加担したであろう複数の村で虐殺を行ったり、強制収容所に送り込んだりし、結果多くの人が死亡した。
しかし、現在では暗殺を行った彼らは英雄視されており、記念館や映画が作られている。
当時の人は暗殺者に対してどのように思っていたであろうか。
指示したイギリス政府の人間たちは拍手喝采だったであろう。
しかしチェコではたった1人を殺したがために、何千人もの人が殺されたり強制労働所送りになって不幸な目にあっているのだから、単純計算でいえばマイナスである。
この事件についてどう考えるべきか。(次に続く)