ライトファストで描くイミーの肖像画:ジェイク・スパイサー
私たちが目にする世界の多くは中間色であり、鉛筆のような最も暗い暗色や、漂白された紙のような明るい白色は、視覚の世界では稀有な存在です。
20世紀以前は、私たちが慣れ親しんできた紙のように白い紙に絵を描くアーティストは殆どおらず、歴史的作品の多くは、多様に使用されるオフホワイトの紙で作られていました。
私は中間色の紙が大好きなので、ダーウェントのトーンペーパーに作品を描いてみないかとお声がけ頂いた時は、とても嬉しかったです。
A4とA5のパッドは、丈夫で軽量なミッドトーンペーパーで、様々な色調のものがあり、両面とも滑らかで質感のある紙です。
このブログでは、ライトファストで、このパッドのライトグレーの紙の滑らかな面に描いたイミーの肖像画を紹介します。
第1段階:ラフスケッチング
色:トープ
写真をもとに、トープという温かみのある中間色で下絵を描き、後のレイヤーで簡単に隠せるようにしました。
この作品では鉛筆をアンダーハンドで持ち、より軽く、よりエネルギッシュなマークが描けるようにします。
第2段階:トーンマップ
色:トープ
ラフスケッチングをもとに、顔の中で最も重要な色調と色彩の形状の地図を大まかに描きます。
この段階は、作品の中ではインパクトが弱いものの、その後の全ての基礎となる最も重要な段階となります。
第3段階:明るさの箇所
色:ワイルドラベンダー、ターコイズグリーン
ターコイズやラベンダーで肌の繊細な色味を拾ってから、暖色系の細部に移ります。肌の暖かさに比べ、グレーの紙は相対的に冷たいトーンので、顔の光の陰影の多くを上手く表現することができます。
第4段階:特徴を埋めていく作業
色:フレッシュピンク、サーモン、ダーウェントレッド、ディープローズ、オイスター、バーントシエナ
この段階で初めて、顔に色を付けていきます。
先ほどのトーンマップを参考に、肌の表面に印をつけながら、ライトグレー紙が透けて見えるようにしつつ、暖色系の色で形を埋めていきます。
鼻の穴、瞼の縁、唇と歯の間にある影などがそれにあたります。
最終的には、この特徴から、肌全体を同じような色のパッチワークで覆っていきます。
第5段階:ハイライト
色:ホワイト
この段階で、ミッドトーンペーパーの本領発揮です。
前ステージで使ったのと同じ方向性の印を使って、頬とこめかみにほのかな光の領域を作り上げ、特徴の周りにシャープなハイライトを入れました。
このハイライトは、頭の形を強調するだけでなく、顔の温かみのある暗部と強いコントラストを作り出し、イミーの顔の表情豊かな要素に着目させることに成功しました。
第6段階:目
色:ダークターコイズ、ホワイト
目の虹彩の形や、白目の周りの陰のスペースは、デッサンの早い段階で決まっているのですが、描いている最中に目を見つめ返されるのを避けるために、他の特徴よりも目の細部を後半で描く習慣があります。
ホワイトとダークターコイズは、虹彩の色を際立たせ、イミーの肌や髪の赤やオレンジとコントラストをつけるために使用しています。
第7段階:髪
色:ベネチアンレッド、シャンパーニュ、ディープローズ、バーントシエナ
髪の形は、描き初めにほぼ決まっていますが、オレンジ色の帯はかなり後になってから、顔のそばかすに使う色を使って描いています。
毛の一本一本を、できるだけ忠実に描くようにしました。
シャツを描き終えたら、襟の上にも髪の毛を描き加え、後頭部のあたりで後退していく髪の毛を濃くしました。
第8段階:シャツ
色:トープ、ダークターコイズ、ホワイト
シャツの模様は、「イミー」の絵と一緒に制作した植物画の依頼を反映したもので、キュー・ガーデンのガラス温室にある植物をモチーフにスケッチしたものです。
トープで描かれた形から始めて、色調と色彩の形を埋めていき、目に使った色調と呼応させました。
第9段階:そばかす
色:バーントシエナ
そばかすは、肌の色とトーンのバランスが取れてきてから描くのが一番簡単です。
ゆっくり描く必要はありませんが、周りの肌との色の濃さ、薄さに気をつけながら、繊細なタッチで描いていきます。
そばかすひとつとっても、イミーの唇の境目にある色素沈着のように、影の境界を越えることで色調が変化することがあるので、そばかすを含むデッサンは、その変化に敏感でなければなりません。
第10段階:仕上げのバランス
色:上記で使用したすべて
一旦作品から離れ、全体を最終的に評価した上で、完成と判断することが重要だと考えている。
様々な色で最終調整を行い、消しゴムで薄くしたり、きれいにしたりしてから、一歩下がって完成を宣言します。
本稿を提供してくださったジェイク・スパイサー氏に感謝申し上げます。
彼の作品はウェブサイト、Instagram、Facebookでご覧下さい。