人生を上手くなりたきゃ、風来のシレンをやれ
今回は、僕が小学校の頃に一時期一日3-4時間はプレイした、チュンソフト(現在はスパイク・チュンソフト)開発の、N64版「風来のシレン2」について語ろうと思います。
「何度も挑戦、何度も楽しい」
風来のシレンは、その界隈でよく、「スルメゲー」と称されます。
スルメゲーとは、"スルメのように、噛めば噛むほど味が出て行くゲーム"という意味です。
風来のシレン2は、そのスルメ度合いが尋常じゃないです。
どのようなゲームかは、上の動画を見てもらえると感じがつかめるかと思います。
基本的には、将棋のように、自分1マス動けば、相手(全モンスター)も1マス動く、というターン制のRPG(ローグライクRPG)です。
しかし、この説明と、この序盤の動画だけだと、
「いや、ドラクエとかマリオの方が面白くない…?」
と思ってしまいます。そこがこのゲームの唯一の欠点です。
僕も、購入してすぐは、
「ジャンプもできないし、ビームもミサイルも無いし、つまらんなこのゲーム。」
と思い、しばらく放っておいていました。
CMの動画で「何度も挑戦、何度も楽しい」と言われているように、このゲームは、ハマると少なくとも3年、長い人は10年単位で遊べる、超スルメゲームなんです。
運と実力が占めるファクターが、絶妙
細かい部分の面白さや、思い出を語ればキリが無いので、このゲームの一番核の面白さをまず紹介します。
それは、プレイヤーがコントロールできないランダム性と、コントロールできる部分のバランスが抜群に良い、という点です。
将棋でいう盤面に当たる”ダンジョン"は、プログラムにより毎回ランダム生成されます。
そのため、同じダンジョンに挑んでも、前と同じ形になることは二度とありません。二度と、です。
また、モンスターを倒すのに役立つ様々なアイテムも、場所を含めランダムに出現します。(ダンジョンにより制限はあります。)
なので、ゲーム序盤でいきなり最強クラスのアイテムがすぐ目の前に現れたり、
逆に、進めども進めども弱いアイテムしか出てこない、という場合もあります。
また、欲しいアイテムがすぐそこまで見えているのに、たまたま水に阻まれたり、強いモンスターのそばに配置してあったり…
剣や盾はたくさん手に入るのに、回復アイテムが全く出現せず、最強装備のままゲームオーバーになったり…
そして、一度ゲームオーバーになってしまえば、ドラクエなどとは異なり、レベルや持ち物が全て0に戻ります。
なので、ひたすら鍛えて、ランダム性を気にせずにゴリ押しして行く、というのは設計上不可能です。
突然ですが、これって、人生に似ていませんか…?
多くのゲームは、大体どのタイミングで何が出現するか、が固定されており、それを覚えてしまえば最初は難しくとも、徐々に目をつぶってでもプレーができるようになります。
しかし、風来のシレンのようなゲームは、ランダムに変わる状況に対して、自分の持ちアイテムをうまく組み合わせたり、運用していかなければなりません。
そして、一つのアイテムにも、
・モンスターを倒すための武器としての用途
・武器を強化する素材としての用途
・一部のアイテムは、食料としての用途
など、様々な組み合わせ、使い方がプレイヤーに任されています。
実生活でも、何が起こるか予測できることはものすごく少なく、自分がある目的で行った行動が、実は別のことに役に立ったり、逆に障害になったり、その連続です。
そして、環境が変化すると、今までやってきたことが全く役に立たない、ということは、多くあります。
風来のシレンは、そんな人生の理不尽だけど面白い側面、そしてそのうまい乗りこなし方を、体験を持って教えてくれたゲームだと思ってます。
いい遊び(=ゲーム)は、偶然と実力のバランスが、現実よりは複雑ではなく、しかし予測するのが難しい、という絶妙なものが多いと考えられます。
例えば、19世紀半ばの中国で発明され、今も遊ばれ続けている麻雀も、プレイヤーに配られる牌はランダムですが、
他のプレイヤーの心理状況や、手を予想し、適切なタイミングで自分の牌を回していく部分に、腕の見せどころがあります。
僕は麻雀はオンラインで数回やったのみなので、詳しくは知りませんが、
友達の話を聞くと、"あのタイミングで切っておけばよかった..."という判断ミスの後悔をよくするようで、
それ故もう一度挑戦したくなり、徹夜してでも飽きないゲームなのだろうな、と感じます。
風来のシレンでも、出現するアイテム(麻雀でいう牌)が数十〜数百あり、何度も危機的な状況に陥る中で、
「今、このアイテムを使うべきか、それとも後にとっておくべきか...」
と悩む場面が何度も出て来ます。
そして、後に回しておこう、と思ったら、すぐにゲームオーバーになったり、
すぐに使おう、と思い使ったら、後で「使わなければよかった...」と思ったり、という場面が何度も起きます。
これ、二回目ですが、人生に似ていると思います。
非常に上手な人は、どのような「引き」でも、その「引き」に対する対処の仕方が身についているので、ある程度の確率で勝っていくことができます。
しかし、いくら上手な人でも、偶然が重なり負ける確率は、0にはなりません。
ベテランプレイヤーが偶然の重なりによって詰む動画です。ゲームを詳しく知らなくても「ああ、なんかボコボコにされているな」というのは伝わると思います。
この、ある規則性を持ったランダムというシステム設計が、小学生の僕の心を掴んで離しませんでした。
ポケモンなどの有名なゲームも、ポケモン出現率や、モンスターボールでの捕獲可能性など、ランダム性を含んでいます。
ただ、風来のシレンのランダム性は、同時期の他のゲームより群を抜いて複雑であった、と言えると思います。
逆に、ランダム性がかなり低く、純粋なプレイヤーの腕の勝負、というスポーツのようなゲームも多く存在します。
リッジレーサーズなどの、リアルさを志向したレースゲームや、FIFAなどのサッカーゲーム、スマブラ・ストリートファイターなどの格闘ゲームは、これに当たります。
こういったゲームでは、上手い人は何回やっても勝ち続け、負ける人は負けます。
僕は当時、「反応スピード」が求められるゲームが下手だったので、こういうゲームはあまり好きではありませんでした。
しかし、風来のシレンの場合、そもそも一人ゲームなので、「誰かに負け続ける」という悔しい思いというよりは、自分との闘いになります。
その点も、当時の僕に響いた点でした。
奥へ奥へと行く、探索の楽しさ
風来のシレンのダンジョンは、「階層」で分かれています。
各階層には、階段が一つだけ、ランダムに配置されており、その階段を降りる/登っていき、階数に達したらクリア、というシステムです。
この、ダンジョンの奥へ、奥へと入って行くシステム設計も、当時秘密基地や探検が趣味だった小学生の僕に響きました。
現実の街は、そう数十分おきに何か新しい風景が開けたりすることはありません。
しかし、このゲームは毎分何が起こるか全く予想ができず、どんどん未開の地を切り開いていける感覚があります。
また、ゲームのクリア後の特典として、「最果てへの道」というダンジョンが出現します。
通常のステージが10~20階層でクリアとなるのに対して、最果ての道は、99Fまでたどり着かないとクリアしたことになりません。
探索好きとしては、挑戦せずにはいられない特典だと思います。
小学生では、序盤であっさりと負け続け、中学生になった後に、何回か再チャレンジしましたが、僕は未だにクリアできていません。
老後に、老人ホームにはおそらく僕らの世代のゲームがプレイできるようになると思うので、その際に思う存分攻略していきたいと思っています。
2021年現在でも、小規模ですがYoutubeでこのステージのタイムアタックに挑戦している人がいるようです。
普通の人なら、10階層分進むのに1時間以上かかってしまうところを、全てを1時間以内にクリアする、という神の境地の人々です。
異様に作り込まれた世界観
ダンジョン自体以外にも、それを支えるアイテムの種類も、数百種類存在し、
敵モンスターの種類も、同じく百近くは存在します。
そして、全てのアイテム、モンスターに、ジョークを交えた2-3文の説明文が書いてあります。
正直にいって、この作り込みは異様だと思います。開発者の人が何を考えていたのか、少し知りたいくらいです。
そして、武器を完全コンプリートするだけでなく、このゲームではクリア後の特典として”モンスターの動物園”にモンスターを捕まえてくる、
というタスクが発生します。
ポケモンと同じボリューム感が、クリア後の”特典"として付加されているのです。尋常ではありません。
つまり、このゲームを完全コンプリートするのは、実質不可能に近いです。掘っても掘っても、やるべきことが増えていく。
それ故、「なんども挑戦、なんども楽しい」ということなのです。
人生をシレンで学べ
・ランダムな世界探索していくことを楽しむこと
・自分一人の戦いを楽しむこと
・世界の複雑さに対して、絶望するのではなく、臨機応変に対応して楽しむことリスクのとること
・終わりのない「なんども挑戦」を楽しむこと
これが、僕がシレンから学んだことです。
僕は、僕の「最果てへの道」を潜り続けます。
皆さんは、どんなダンジョンを攻略していますか?
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