途中から事件はどうでもよくなってしまった本「噂」読書感想文
萩原浩さんの小説「噂」を読んだ感想です。
女子高生が狙われる事件にビクビクしながら読み進めるも、徐々に担当刑事の2人の関係性が気になり始め、しまいには「もう事件はどうでもいいから2人の恋愛ストーリーを読ませてくれ」と懇願しました。
※以降ネタバレ含みます。
おや?これは恋愛小説ですか ─
そもそもの発端は、若い女性たちの間である噂が広がり始め、それが本当の事件となってしまう、というもの。
その噂が「レインマンが女のコの足首を切っちゃうんだ。でもミリエルをつけてると狙われないんだって」という都市伝説的な。ミリエルっていうのは香水ですね。
そして見つかる足首から下がない女子高生の遺体。
こんなもんね、怖すぎますよ。
今回の犯人はシンプルに足フェチだったということで…いや、別に性癖は色々あるんでそこにはツッコまないですけど。
「足フェチなんで足を切って所持します!」はサイコパスすぎるだろ。お前。
で、そんな犯人を追うのが2人の刑事さん。小暮さんと名島さん。
小暮さんは高校生の娘がいるいい歳のお父さんで、名島さんはまだ小さい男の子がいる若いお母さん。
刑事歴は小暮さんの方が長いけど、年下の名島さんの方が階級が上。
2人に共通しているのは子供がいることと、夫婦のパートナーを亡くしていること。
その2人が事件を捜査していくうちに徐々に距離が近くなっていっちゃうんですよ…
お互いの亡くなったパートナーのことを語ったり…子供のことを相談したり…最初は敬語だった2人も…時々敬語じゃなくなったりして。
なにこれ。これが恋の生まれる瞬間?俺はすごいものを見ようとしている?小暮がアダムで名島がイヴ?
大人の甘酸っぱい恋愛模様に錯乱状態になり、全然関係ない駅で降りそうになりました。祖師ヶ谷大蔵ってどこだよ。
そしてこの小説は「最後の1行がすごい!」ってことでも有名ですが、確かにすごかったです。事件解決からの流れですね。
捜査も無事終了し、お互いの子供を交えて新しい何かが始まりそうな予感。
読んでいる俺は2人のこれからを想像します。4人で幸せになっちゃうんだろうなぁ。希望しかないお花いっぱいのお花畑、だったのに…
ブウォオォオオオー!
うわあああぁー!
最後の最後でそのお花畑を火炎放射器で一掃されました。そのぐらいの1行でしたお疲れ様でした
小暮さんと名島さんの関係性が気になって事件そっちのけになってしまいましたが、登場人物やどんでん返しなど、かなり好きな作品でした。
続編があったら絶対に読んじゃいますね。
小暮さんと名島さんに幸あれ ─