【日常紀行】本の森は、ワンダーランドとなる!
図書館よ!
知的アミューズメントパークとなって化けて出でよ。
暑い夏のある日、そんな言葉を思い浮かべながら、
富山市の図書館で恐竜のような天井を見上げていた。
思い出した。少年時代、高三、大学受験の頃。
もう30年以上の前の話だ。
期待と不安、そして少しの憂鬱を抱えながら、
夏休みに川向うの市立図書館に毎日通っていた。
暑い盛り。勉強に我慢できなくなると、エアコン
の効いた書架の立ち並ぶ間接照明の階下に降りた。
本の背表紙が背の高い書架に整然と並ぶ。
背表紙を横目に歩く。
よく手入れされた森を歩いているみたいだ。
えっ、何?変なの!と足を止める。
「人間の証明」→そんなこと出来るの?、
「人間失格」→えっマジ?何でそうなる!、
「存在と時間」→お互い、何の関係あるの?、
「限りなく透明に近いブルー」→何て綺麗な言葉!、
「ノルウェーの森」→北欧と言えば森、カバー美しい、
「精神現象学」→ ・・・・
奇妙な言葉の組合せが意匠を纏って刺激をしてくる。
勿論読んでない、せいぜいつまみ読み、意味は不明。
でも、本棚に囲まれた小道を歩いているだけで次々に
妄想が湧き、深い森の中で新しい世界に出会う。
そして、言葉の断片がパラパラと僕の中に沈殿する。
書架の森を抜けると、雑誌コーナーへ。
ゆったりとしたソファーがある。
すると森から抜けた林のように光が落ちてくる。
カメラ雑誌、鉄道雑誌、文房具雑誌、模型雑誌、
そんなことに興味ある人がいるんだ。
男性ファッション雑誌、デートって大変なんだな。
旅行雑誌、ゴルフ雑誌、たまごクラブ?
おっと、その前にすることがある。
勉強しに来たはずだ。
毎日30分の18才の探検。人間と自然、哲学。知と俗。
ギュッと世界を見える化した知的探検の空間。
図書館はそんな魅力のある異次元空間だった。
令和の価値観と技術は、どんな新しいワンダーランドを
見せてくれるだろう?
富山から帰って読んだ新聞報道にも息吹きを感じた。
多様な日本の地方文化、図書館、そしてテクノロジーが
創造する新しい世界と空間が楽しみだ。
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