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インタビュー 村上浩康映画監督「映像世界の追体験こそ、映画創りの核」(4)

神奈川県の中津川で動植物の保護と研究に取り組む二人の老人を追った「流 ながれ」、岩手県盛岡市・高松の池に集まる人々たちを描いた「無名碑 MONUMENT」など、独自の視点で切り込んだドキュメンタリー作を世に放ってきた村上浩康監督。映画をこよなく愛し、ドキュメンタリー映像作家として我が道を行く村上監督の自身の作品や映画作りへの思いを語ってもらった。

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「無駄なことを説明しない」映画監督・ダルデンヌ兄弟に惹かれた理由

―監督は、ベルギーの映画監督、ダルデンヌ兄弟がお好きだそうですね。

村上:ダルデンヌ兄弟の作品で最初に知ったのは、2000年に見た「ロゼッタ」なんですけれど、以来、「ロゼッタ」を超える映画には出会っていないというくらい、すごく感銘を受けました。

※ダルデンヌ兄弟
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの兄弟の映画監督。社会問題をテーマにしたさまざまなドキュメンタリーを制作。その後、劇映画の分野でも「イゴールの約束」「ロゼッタ」「ロルナの祈り」などでカンヌ国際映画祭の常連となり、世界的に高い評価を受けている。

※「ロゼッタ」
ダルデンヌ兄弟が制作した映画。トレーラーハウスで母と暮らす少女ロゼッタの人生を描き、カンヌ国際映画祭でパルムドール賞、主演女優賞を獲得している。

――そもそも、「ロゼッタ」という作品にどうやって出会ったんですか?

村上:普段仲よくしている年下の青年に観にいこうと誘われたんです。当時、僕はあまり興味がなかったんですが、彼が「行きましょうよ」としつこく誘うので「しょうがねえな、行くよ」と一緒に観にいきました。いざ観たらびっくりして、席を立てないくらい感動してしまった。ところが、一緒に行った彼は「村上さん、すみませんでした、こんなつまらない映画」っていうんですよ。だから、思わず「どこがつまらないんだ、バカヤロー! こんな素晴らしい映画ないじゃねえか」と、その後、彼に2時間くらい「ロゼッタ」の素晴らしいところを説明していましたね(笑)

――「ロゼッタ」のどこにそれほど強く惹かれたのでしょうか?

村上:一つは表現方法ですね。無駄なことは一切説明しない。対象にこれ以上近づけないんじゃないかってくらいにへばりついて撮っているんですが、へばりつき方が冷静で、そばでただ見つめているだけなんですね。ロゼッタという人間を分析もしないし説明もしない、断罪もしないし同情もしない、何もしない。ただ、ロゼッタのある人生のひとこまを見つめているだけなんですが、その見つめ方が素晴らしい。もちろん、さまざまな映画的な工夫や技法もたくさんあり、それも作り手としてはすごいなと思ったんですが、最初に感じたのは作者の視点。そこにすごく心を動かされました。

現在の撮影テーマは干潟~多摩川河口で起こる現象を映画に

――監督が現在撮影されている作品があるということで、そちらについてぜひお聞ききしたいと思います。

村上:多摩川の河口の干潟を撮影しています。羽田空港と京浜工業地帯の間に流れる多摩川の本当に都会の川の干潟です。

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