第二十一夜 権力者を無理やり…… 後編
DVと言えば、男性から女性へのものが一般的だし、件数としても圧倒的なのだが、それでも、女性から男性へのDVも無視できない。
また、映画「氷の微笑」で描かれたような、女性から男性への性暴力も、件数は少ないながら、根強い問題として存在している。
他者に暴力で尊厳を冒されないことは、男女問わず、人間の持つべき、根本的な権利である。
私は力づくで道長さまを押さえつけた。
道長さまは、よほど怖ろしいのか、ろくな抵抗もしなかった。
道長さまの下袴を強引に引っぺがすと、道長さまの逸物は、哀れなほどに縮こまっている。
それを見ても、容赦するつもりにはなれなかった。
私は、隆々とそそり立った、自分の逸物を握りしめて、不思議な気分になった。
私の裡にあるのは、怒りや憎しみや復讐心であって、性的な興奮ではない。だのに、私の逸物は、はち切れんばかりにそそり立っている。
これが男というものなのだろうか。
性的な欲望がなくとも、男の逸物は、相手を屈服させ、征服する喜びで、いきり立つものなのだろうか。
しかし、だからと言って、このまま終わらせるつもりはない。私は、逸物を道長さまの肛門にあてがい、一気に挿入した。
「うほっ!」
道長さまが悲鳴をあげた。温かくてきつい感触が、私の逸物を包み込む。
私の裡にあるのは、怒り、憎しみ、そして復讐心。だけど私の逸物は、確かに快感を伝えてきた。
道長さまは、苦痛にうめいているようにも見えるし、快楽にあえいでいるようにも見える。
複雑な気持ちで、私は腰を前後させた。
道長さまの中に放つと、複雑な感情が私を包んだ。
これはーーそうだ。
空しい。
はっと気がつくと、私は自分の屋敷に戻っていた。
「どうでしたか? 復讐を遂げた気分は」
「それは……」
「楽しくはなかったでしょう? あなたは一つ、大事なことを学んだ」
立ち去る晴明さまの背中を見送りながら、私は、男と女の間にある、大きな溝に思いを馳せた。