第二十三夜 熱にうかされて…… 後編

 貴族の日記などから推定される、当時の流行病は、豌豆瘡(わんずかさ=天然痘)、赤斑瘡(あかもがさ=麻疹)、瘧(おこり=マラリア)、インフルエンザなどである。
「水が湯になるほどの高熱を発して死んだ」
 とされる、平清盛の死因も、マラリアであったと言われている。
 また、貴族階級では、中風(脳卒中)、消渇(しょうかち=糖尿病)、脚気などの、感染症以外の病気にも、かかる機会が多かったようだ。


 意外なかたちで訪れた、今宵という夜であった。
 中将の君も、やはり並の男だったという事実は、少しだけ、
「私は中将の君にはふさわしくないのではないか」
 という思いを軽くしてくれた。
 拾のことを思うと、心は痛む。でも、死に行く者の最後の望みを叶えるのは、きっと功徳だろう。
 中将の君の足元に座った私は、そっと前をまくりあげた。
 中将の君のものは、すでに屹立していた。
 私は、指で触れ、手のひらで触れ、口にふくんだ。
「あっ……」
 中将の君が、小さくうめく。
「じっとなさっていてください。私がお世話いたします」
 私は服を脱ぐと、中将の君にまたがり、屹立した陽物の上に、ホトを触れさせた。
 中将の君の汁と、私の汁とが、二人の間で混じり合う。
 決意を決め、私は深く腰をおろして、中将の君を呑み込んだ。
「あっ……」
 今度はうめくのは、私の番だった。
 中将の君の陽物は、生にしがみつくかのように、私を激しくむさぼった。若さにまかせた拾のむさぼりとは、また違う刺激に、私は激しく感じていた。
(いい……いい……これもいい……)
 感じることは、拾に対する罪だろうか。だとしたら、どんな罰が私を待っているというのか。
 そもそも、一度に二人を愛することが、男にとっては罪でないのに、なぜ女だけに罪なのか。
「あああっ……!」
 中将の君が激しく脈動し、私の中で果てた。
 がたっ。
 大きな音に目をやると、そこには、几帳の下敷きになった拾がいた。
「奥方さま……これは……申し訳ございません!」
 走り去っていく拾を、追うべきか、追わざるべきか、私は迷った。
 その時、私の中で、中将の君が、再び硬さを取り戻すのが感じられた。
 認めよう。
 私は、もう少し中将の君をむさぼりたくて、拾が行くのをそのままにしたのだ。


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