「行動に善悪がある事の思考実験」

「行動することがすべてなのだ」とゲーテは言いました。

僕はそうは思いません。

行動には、するべきであることと、するべきでないことがあります。

それは皆直感で分かっています。

ですが、それを論理的に証明した人はいなかった。今から行動には善悪があることを証明します。

思考実験です。

[あなたは、5分後に死刑になる死刑囚です。あなたの目の前にある男がいます。あなたはその男を殺すことができます。あなたはその男を殺しますか?]

1.あなたが殺すことができる男は、罪人ではありません。

2.あなたは、その男を殺しても殺さなくても5分後には死刑になります。


さあこの条件下で、あなたは男を殺しますか?

殺さないならば、行動には善悪があるのです。

なぜなら、殺人というのは行動であり、殺人をしないのは行動でないからです。

もし行動することそれ自体に価値があるならば、あなたは殺人をするべきなのです。

しかしもしあなたが殺人をしないならば、行動そのものには価値がなく、行動には、しない方が良い行動があることになります。

「行動することがすべてなのだ」

これは間違っています。

「善い行動をすることがすべてなのだ」

これが正しい言い方です。

殺人という悪い行動は、いくら死の目前であってもしようと思いません。

行動には、善悪があり、行動そのものには価値がないのです。

以上証明終わり。


以上のことからアンドレジッドのこの言葉も反駁できます。

「ナタナエルよ、君に情熱を教えよう。 行為の善悪を判断せずに行為しなくてはならぬ。善か悪かを懸念せずに愛すること。・・・私は、私の心の内で待ち望んでいたものをことごとくこの世で表現した上で、満足して、あるいは絶望しきって死にたいものだ。」『地の糧』

「行為の善悪を判断せずに行為しなくてはならぬ。」

これは間違っています。

この言い方は行動そのものに価値があることを示唆しています。

上記の思考実験からすると

行動そのものには価値がない。悪い行動ならばしない方がいい。

悪い行動をしないためには、行動の善悪を事前に判断する必要がある。

だから、その行為の善悪を判断してから行為せねばならない。

ということになる。

ジッドさん、すまないね。

ゲーテとジッドを論破したところで、今日は寝るとしましょう。

いや、今夜は良い夢が見れそうだ。

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タノミノ(田野穣)@毎日更新
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