プレイングミスを減らす方法2
昔書いた内容から改めて。
https://note.com/denneko828/n/n4ebe4a85ac99
対戦ゲームにおいて、ミスは致命的な結果を招く一方で、人間である限りミスを無くすことは出来ない。
世の中では『人間はミスを起こす』を前提に、ミスが起こっても惨事に繋がらないよう工夫したり、挽回できるようにするのが良いシステムである。
しかし個人戦であるカードゲームでは、そのようなシステムの構築は難しい。
じゃあ、どうしようか。
EDHの勝敗を左右するもの
実際の所、EDHの決着は誰かのミスに起因することが多いと思わないだろうか?
全てのミスが回避可能というわけではないし、結果的に避けようのないミスもあるのだが、「あの時のアレが…」そう思うゲームは確かに存在する。
では、深く考えて慎重に事を運べば良いかというと、それも違う。
考え過ぎると重要な要素をかえって見逃したり(分析麻痺)、認知バイアスが強く働くこともある。
補足すると、バイアスとは偏見や思い込みというような意味。
人間は自分がニュートラルな考えであると信じたくても、様々なバイアスに捕らわれているため一定の思考の歪みがある。
だからこそデータ検証の分野では、「前向き」「盲検」「ランダム化比較試験」など人のバイアスの影響を小さくする工夫がされる。
話は逸れたが、先のnote記事では『工程を複雑にしすぎない』『休息をとる』『駆け引きや選択肢を減らす』などを述べた。
ミスの発生をゼロに出来ないのなら、発生する可能性があるポイントを減らせば良いという単純な思考。
もう一つ、使い慣れたデッキを使うことも挙げた。
これもミスを減らす工夫だが、直観という観点から説明を補強したい。
直観に頼れ
一つ面白い研究*を紹介しよう。
バスケットボールの専門家と自称する人達を二つの群に分け、試合の結果を予測させた。
片方の群には理由を詳細に分析してから予測させ、もう片方の群には単に結果のみ予測させた。
すると驚くべきことに、理由を詳細に述べた方が適中率が低かった(理由なく結果を予測した群の方が適中率が高かった)。
知識と経験が豊富な専門家は、長年の経験によって多数のパターンを習得しており、直観的に判断する。
直観は迅速に答えを導き出すだけでなく、しばしば正確な判断をする。
心理学者のダニエル・カーネマンはこれを熟練した直感(skilled intuition)と呼び、特定の分野で豊富な経験を持つ専門家が、迅速かつ正確に判断できることを説明している。
しかし専門外での活動や急速な環境変化を伴う場合は直観はアテにならないので注意。
直観とは対称的な考え方、論理的で意識的な思考は、労力と時間を要し、何よりも消耗する。
そして、深く考えても幾つかのバイアスからは逃れられない。
例えばアンカリング効果。
最初に提示された情報に強く影響され、その後の判断が引きつけられてしまう現象。
1ターン目の《神秘的負荷》で凄くカードを引いたプレイヤーがいる。脅威だろう。
5ターン目まで長引き、ゲームは二転三転しているにも関わらず、最初の《神秘的負荷》が印象に残り、驚異度を見誤る。で、負ける。
例えば確証バイアス。
既に持っている自分の情報や考えに都合の良い情報ばかり集めてしまうバイアスである。
対戦相手がカウンターを持ってないのでは?と思い込んだ時に、カウンターを持ってない根拠ばかり探して、自分で納得して突っ込む。で、負ける。
バイアスの存在自体を知ることである程度の対策は出来ても、限られた制限時間内に自己分析だけで克服することは難しい。
回避する確率を上げるには他人からのフィードバックや過去の対戦の経験に頼るしか無い。
更に思考は全て言語化出来ると思っている人もいるだろうが、そんなことは無い。
人間の無意識が行動に与える影響はとても大きい。
フロイトは夢分析によって無意識を知ることが出来ると主張したが、現代の認知心理学では無意識を完全に理解することは難しいとの結論。
どんなに考えても、認知の歪み(バイアス)から逃れられず、答えの無い無意識の影響は、そもそも考えたところで仕方が無い。
必要に応じて早い思考とゆっくりした思考を使い分けるべきだが、とりわけEDHの大会では制限時間があるので、「時間を使ったのに思考の結果は変わらない」という自体は出来れば避けたい。
直観を鍛えたい。
対戦相手のミスを誘う
EDHは全員が完璧なパフォーマンスを決めて一番上手だった人が勝つゲームというよりも、誰かのミスにより決着するゲームであると僕は考えている。
ミスはするもの。避けられないもの。
ならば対戦相手に自分よりも沢山のミスをさせる。
実に勝負事は必ずしも優れた方を決めるものでは無い。
例えばテニスの場合、プロの試合は8割以上が攻勢による得点であるのに対して、アマチュアの場合は8割以上が相手のミスによる得点である。
そのためアマチュアのテニスは「敗者のゲーム」と呼ばれる。
しかし相手の失点でも、立派な勝利である。
ならば、むしろ対戦相手のミスを積極的に誘ってはどうか?
例えば、自分のハンドの強さや意図をわざと誤解させる行動を取る。
一貫性の無いプレイングで相手に自分の次の手を読みづらくさせる。
迅速な行動や遅延を使い分け、相手のリズムや集中力を崩す。
強い手札を持つプレイヤーとして振る舞い、ブラフの成功率を上げる。
などなど、駆け引きのゲームで使われるテクニックが使える。
また、感情的になり冷静な判断が出来ない状態(ティルト状態)ではミスが増える。
是非とも挑発や嫌がらせを、と言うと色々と揉めそうだが、偶発的に起きた土地事故や誰かの理不尽な(?)妨害に乗じて、適度に相手を煽りたい。
逆に自分はミスをしても後悔し過ぎないようにするとか、妨害されたから妨害し返すといった安直な考えは捨てるべきである。
ただしミスを誘うプレイの問題は、多人数戦の場合は自分に有利なミスとは限らず別の誰かを勝たせることがあり得ること。
自分に有利なゲームメイキングをするには、沢山の経験は必要そうだ。
まとめ
使い慣れたデッキの直観を信じ、相手を煽れ。
ではまた。
*脚注 バスケットボールの試合の予測の研究
Halberstadt, J. B., & Levine, G. M. (1999). Effects of reasons analysis on the accuracy of predicting basketball games. Journal of Applied Social Psychology, 29(3), 517–530.