見出し画像

お薦めマイナー本#1 日本女地図

 写真の殿山 泰司とのやま たいじさんは、すでに平成元年にご逝去されているので、若い人は全く知らないと思いますが、癖の強い昭和の名脇役でした。"名脇役"というのはソフトな表現ですが、実際は”因業爺いんごうじじい”や”エロ爺”の役が多かったと思います。戦後の日本映画に数多く出演されているので、古い映画が好きな人なら、顔ぐらいは見たことがあるかもしれません。殿山さんは、その破天荒で波乱万丈な人生でも有名でした。私は見たことはありませんが、殿山さんの生涯が映画化されているそうです。

 殿山さんは、ジャズとミステリーをこよなく愛したことでも知られていて、その趣味について綴った著書(エッセイ)を多数残しています。今回紹介するのは、その中でも奇書(貴書?)とも言える『日本女地図』です。私は、大学生の頃に読みました。表紙の絵は、少し前に亡くなった和田誠さんが描いています。また、帯の宣伝文は糸井重里さんが書いていました。現在は絶版になって、中古本しかないみたいです。昔は私も持っていたのですが、引越の際に処分してしまいました。今考えると、勿体なかったなぁ。

 この本の何が凄いかというと、北は北海道から南は沖縄までの各都道府県出身者との”実体験”が赤裸々に描かれていることです。文体も特徴的で、自分自身のことを、何度も「このクソジジィ」とツッコんでいます。また、「自然は、肉体にどんな影響与えるのか」といったサブタイトルからもわかるように、”文化人類学的”な作者の勝手な考察が含まれています。さらに、各県毎の女性の”デリケートな部分”の呼び名が網羅されていて、”資料的”な価値もあります。

 現在では様々な問題が絡んで、このような奇書は出版が難しいと思いますが、その時代の倫理観や社会的な背景がわかる資料的な価値があると、個人的には考えています。女性にはお勧めできませんが、現代の草食男子が読んだら、この本にどんな感想を持つのでしょうか。とても興味があります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?