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超私的グルメ(21) 奇跡の焼うどん

 今は週休二日が当たり前ですが、昔の土曜日は”半ドン”といって午前中まで学校で授業がありました。そのため、土曜日は給食が無くて、家に帰ってから昼食を食べました。土曜日の昼食は、焼き飯焼きそばの頻度が高かった気がします。しかし、まれに余り物の野菜を使った”焼うどん”が出てきました。

 母は料理の手際は良いのですが、味については結構アバウトでした。大雑把なレシピは母の脳内にありますが、調味料などはいつも目分量でした。なので、いつも味はバラバラで、不味くはないのですが味が’少し濃かったり”、”少し薄かったり”しました。

 焼うどんの味も、入る野菜や肉などの具材が毎回違うので、毎回違う味になります。母が作る焼きうどんは、炒めた野菜に市販の茹うどんを加えただけのシンプルなものでした。味付けはソースではなく、塩コショウと醤油だけでした。

 いつ頃の季節だったか忘れましたが、土曜の午前中の授業が終わって中学から帰ると、母が珍しく焼うどんを作っていました。その時の具は、ネギ、キャベツ、モヤシ、カマボコだったと思います。何とも貧相な具材です。タイトル画の焼うどんには豚肉が入っていますが、その時食べた焼うどんには贅沢な肉などは入っていなかったと思います。

 程なくして、焼うどんが出来上がりました。醬油の香ばしい匂いがして、食欲をそそります。お腹が減っていたので、すぐに食べ始めました。味にはあまり期待していなかったのですが、食べた瞬間「うめー」と思ってしまいました。それまでに、こんな美味しい焼うどんが出てきたことはありませんでした。「今日は何か特別な作り方したの?」と聞いても、「いつも通り」という答えが返ってきました。

 この美味しかった焼うどんに味をしめ、その後何度かリクエストしたのですが、二度と同じ味にはなりませんでした。私の中では『奇跡の焼うどん』として脳ミソに刻まれています。ただ単に、私が空腹だっただけかもしれません。この謎は、未だに解けていません。いつかこの味を再現したいと思っています。

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