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ピンチはチャンス!! 全球凍結

 地球はその誕生以来何度か氷河期と呼ばれる寒冷な気候に支配される時代がありました。現在判明しているもっとも古い氷河期は、南アフリカで発見された約29億年前のポンゴラ氷河時代です。そして、最も新しいものは現在も続いている新生代後期氷河時代です。最近の約一万年は、氷河期の中でも比較的温暖な間氷期とされています。
 ところが原生代初期のヒューロニアン氷河時代(約24億5000万年前から約22億年前)の最終期と、原生代末期のスターチアン氷河時代およびマリノニアン氷河時代(約7億3000万年前~約6億3500万年前)に、地球表面全体が凍結するほどの激しい氷河時代が存在したという考え方が、地球史の研究者の間で主流となりつつあります。これはスノーボールアース(Snow ball Earth)仮説と呼ばれ、1992年にカリフォルニア工科大学のカーシュヴィンク教授がアイデアとして専門誌に発表したのが発端となりました。その後1998年にハーバード大学のホフマン教授が、ナミビアでの氷河堆積物の直上を覆う炭酸塩岩の層(キャップカーボネート)の調査結果などをまとめて科学雑誌サイエンスに投稿して大きな反響を得ました。
 スノーボールアース仮説のシナリオは次の通りです。まず大気中の二酸化炭素が減少します。これによって温室効果が薄れ、気温が低下します。次にこの気温低下によって氷床や海氷が拡大して、地球の反射率であるアルベドが上昇します。アルベドが上昇すると太陽光が反射され、さらに気温が低下します。
 この仮説において注目すべき点は、それまで”あり得ない”と考えられてきた全球凍結という壮絶な環境変動が実際に起こったらしいこと、それが原因となって原生生物の大量絶滅とそれに続く跳躍的な生物進化をもたらしたとされることです。22億年前のスノーボールアースでは酸素呼吸をする真核生物が、6億年前ではエディアカラ生物群と呼ばれる多細胞生物が登場しました。さらにスモーボールアースが、その後の生物の爆発的進化(カンブリア大爆発)と関係があると考えられています。ピンチの後にはチャンスあり。しぶとく生き残った我々のご先祖は、このような困難を乗り越えて、現在まで命をつないでくれました。


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