SF未来話#2 ウサギとカメ
昔々、ある恒星系の惑星で単細胞生物が誕生しました。長い年月をかけた進化の結果、陸上では草原に適したウサギ型生命体が生物の頂点に立ちました。また海中では、水中生活に特化したウミガメ型生命体が生物の頂点に立ちました。
さらに長い年月を経て、それぞれの生命体は知的生命体へと進化していきました。ウサギ型生命体は、著しく発達した下肢が自慢でした。「陸上で我々以上に速く走れて、高く飛べる生物はいない」と豪語していました。またウミガメ型生命体の多くは、「こんな頑丈で固い甲羅を持つ生物はいない。海中を泳ぐ速度も海で一番だ」と思っていました。
ウサギ型生命体は、いよいよ海中に進出することを決意しました。また、ほぼ同時に、ウミガメ型生命体も陸上に進出することを決意しました。
ウサギ型生命体が海中に進行すると、どんなに探しても現生生物の痕跡は、見つかりませんでした。海水の塩分濃度を測ってみると、塩分が濃過ぎるため、一旦進化した水中生物が死滅したようでした。
ウミガメ型生命体が陸上に上がると、そこは鬱蒼とした森が広がる森林地帯でした。ウミガメ型生命体が詳しく探査を実施しましたが、陸上動物は植物に淘汰されて絶滅していました。
ウサギ型生命体が住んでいる惑星は、恒星系の内側から5番目を回る惑星でした。また、ウミガメ型生命体が住んでいる惑星も、同じ5番目の軌道を回る双子の惑星でした。ウサギ型生命体の住む惑星と、ウミガメ型生命体の住む惑星は、恒星を挟んで反対側の位置にあるのでお互いが見えません。ウサギの惑星とカメの惑星は、追いつくこともなく、追い抜くこともなく、永遠に恒星の周りを回り続けました。
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