SF未来話#1 桃太郎
昔々、ある惑星にお爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんは山の近くの遺伝子工学研究所で遺伝子の研究をし、お婆さんは川の近くの再生医療研究所で人工子宮の研究をしていました。お爺さんとお婆さんは、自身のiPS細胞と試作品の桃型人工子宮を使って、自分たちの子供を生み出しました。二人は、その子供に人工子宮の形から桃太郎と名付けました。
桃太郎の遺伝子には、お爺さんが得意の遺伝子工学を使って、遺伝子の改変が行なわれました。そのため、桃太郎は通常の2倍の速度で成長し、体は頑強で、しかも病気知らずでした。また、IQ(知能指数)は200を超えていました。
すでに体付きは成人と同じになった10歳の桃太郎が、お爺さんとお婆さんに言いました。「この惑星では、僕の能力を十分発揮することができません。別の銀河にある居住可能な惑星を探して、移住したいと思います。ですので、ワープ可能なシャトル型の小型宇宙船を準備して下さい」。気宇壮大な桃太郎の志に打たれて、お爺さんは小型宇宙船を桃太郎にプレゼントすることにしました。お婆さんは、異星人との遭遇を考え、脳波感応型の自動言語翻訳機を桃太郎にプレゼントしました。
桃太郎は、途中で鼻の長い犬型異星人、人間とよく似た猿型異星人、さらには飛行可能な翼をもった鳥型異星人を仲間にして、宇宙の旅を続けました。この仲間づくりで、お婆さんにもらった自動翻訳機が、コミュニケーションに役立ったことは言うまでもありません、この時、桃太郎が母星を出発して、すでに5年が経過していましたが、光速を超えるワープ航法のため、母星の時間では2万年程度の時が流れていました。
桃太郎時間の6年目に、居住可能な大型惑星を見つかりました。しかし、その惑星にはすでに先住の異星人が住んでいました。その異星人には、頭に1つまたは2つの、角のような突起がありました。また、この惑星系の太陽に当たる恒星が近いため、異星人の肌は浅黒い赤銅色をしていました。桃太郎は、IQが高く好戦的ではないので、先住の異星人と争うことはしませんでした。桃太郎と仲間たちは、異星人の代表との話し合いで、使い道のない放置されている土地を少しだけ分けてもらうことにしました。その代価として、桃太郎はこの惑星にまだない先進的なテクノロジーを提供しました。
その後、桃太郎は仲間たちと楽しく過ごし、この惑星の技術革新にも大きく貢献しました。また、桃太郎は異星人の女性を妻として、3人の子宝にも恵まれました。めでたし、めでたし。