無変態と不完全変態と完全変態
変態と言っても、今日の話は異常性癖の話ではありません。昆虫の成長の話です。ここで言う変態とは、”昆虫が成長ステージに応じて自らを変身させる能力”のことを指します。昆虫の多くは、この変態という能力を持ちます。
この能力によって、昆虫たちは、卵⇒幼虫⇒さなぎ⇒成虫と、様々な姿に変化します。昆虫は地球上で最も繁栄した生物と言われますが、変態という特徴によって、多様性を維持しています。このような変態には、3つの種類があります。
最初のヘンタイは、『無変態』です。無変態の昆虫は、孵化した後も、ほとんど形態を変えずに脱皮を繰り返して、体のサイズだけが大きくなるように成長をします。このような変態を行なう昆虫は、シミやイシノミといった原始的な昆虫たちです。
次のヘンタイは、『不完全変態』です。不完全変態をする昆虫には、卵⇒幼虫⇒成虫、という3段階の成長段階があります。無変態と違うのは、幼虫と成虫の姿が若干違います。例えばバッタやカメムシは、幼虫の時は翅が生えそろっていませんが、成虫になると翅が生えそろいます。しかし、大きな形態の変化や生活スタイルの変化はありません。ところがトンボやカゲロウの仲間は、幼虫時代は水中生活だったのが、成虫になると空中生活になるなど、姿に加えて生活スタイルも大きく変化します。
最後のヘンタイは、『完全変態』です。完全変態では、卵⇒幼虫⇒蛹⇒成虫、という4段階の成長過程を踏みます。このタイプの変態では、幼虫はいわゆる”イモムシ”の形態をしていてに通っていますが、サナギを境に姿も生活スタイルも大きく変化します。完全変態を行なう昆虫は、蝶、甲虫、蜂、蠅などです。昔、カブトムシを卵から成虫まで育てたことがありますが、幼虫から蛹へ変化する姿には感動しました。
ところで完全変態は、英語ではholometabolismと言います。この単語は、ギリシャ語のholos(完全な)とmetabolē(変化)に由来しています。なお、holoを除いたmetabolism単独では、新陳代謝という意味になります。日本語として使われる”メタボ”は、おそらく ”bad metabolism” を意味していると考えられます。