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【今日の読書】『想像ラジオ』いとうせいこう

東日本大震災のあと、ほとんどの文化人たち、ミュージシャンや小説家などがそれぞれ自分の得意分野、すなわち歌や文章で、さまざまな精神的サポートを行いました。
『想像ラジオ』もそんな小説のひとつです。

あらすじみたいなもの

”想像ラジオ”は津波に押し流されて死んだ男が、高い木の上で仰向けになってラジオDJを勤めるラジオ放送です。
最初、男は自分がどのような状況なのかわからず、ただ自分の頭の中で行っているDJっぷりを誰かが聞いていることだけがわかります。リスナーからのお便りが届き、電話がかかってきます。
彼の父や兄は木の下までやってきて「そこから降りてこっちに来い」と言いますが、木に引っ掛かった男にはどうすることもできません。

リスナーの声や父、兄の声は聞こえても、愛すべき妻の声は聞こえてこない。
左手に握りしめたケータイにも着信はない。

彼はリスナーからの便りで、どうやら我々(彼、父、兄、リスナーたち)は死んでいるらしいということを知ります。
生者である妻の声は聞こえないのです。
“想像ラジオ”は死者にだけ聞こえるラジオ放送なのです。

死者の救済

震災後に出た作品群は、生き延びた人たちへの励ましや、傷ついた心の癒し、これから我々はどのように生きるべきなのかを説いた話や歌が多かったような気がします。
『想像ラジオ』はそれらとちょっと違って、震災で亡くなった者の魂の救済を題材にしています。作品は少ないのではないでしょうか。


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