見出し画像

2021年8月23日週 『火星人先史』、『読者ハ読ムナ(笑)』、『偽文士日碌』終わる、『残像に口紅を』

8月23日から8月29日までの読書に関する日記・備忘・そのほか。
もうすぐ8月が終わる。

川又千秋『火星人先史』(Kindle)再読。
先々週、同じ著者の『幻詩狩り』を再読した。その流れで『火星人先史』を読み返した。

今まで読まなかった本、最新の本、読めていない書物はまだまだあるのに、いまさら人生の前1/4に読んだ本を読み返さなくてもよかろうと思う。
なのになのに、読んじゃうのよ。
読みたくなるのよ。

地球最後のカンガルーが死んだとき、火星のカンガルーは人類に反旗を翻した。


テラフォーミングのために導入した動物が人間に反乱を起こす話といえば、マンガの『テラフォーマーズ』を想像する。
その『テラフォーマーズ』に先行すること30年、1980年に発表された本作品。さすがに古い感じがし、無理矢理なところもあるけれど、この著者特有なリリカルさが好き。

藤田和日郎、飯田一史『読者ハ読ムナ(笑)』(Kindle)読了。

ビジネス書としておもしろく読めた。

『うしおととら』の藤田和日郎の元に来た新人アシスタントが週刊誌連載を取るまでに、藤田や編集にどのように指導を受けたのか。
「無口禁止」で始まるコミュニケーション論、見た映画の何が好きで何が嫌いなのか明確にする〈言語化〉など一般に敷衍できることが多い。

さすがに後半の漫画の技術論は読み込んで抽象度をかなりあげないと一般化は難しいけど、前半だけでも読む価値は充分にあった。

※※

先月末に終了が告知された筒井康隆の『偽文士日碌』が正式に終了した。
あとがきが三行ほど追加されてあっさりと。仕方がないこととは言え、寂しい。
前半はすでに単行本化されていて、いずれ刊行される続刊を待とう。

一方で、TikTok けんご@小説紹介 が紹介して火がついた『残像に口紅を』がまだまだ売れているようで自分のことのようにうれしい。

『残像に口紅を』の作中で主人公の「佐治」が講演会で紹介される。
使える言葉が少なくなった中でようやく絞り出されたのが唯一書いた少女もの『夜走る少女』。そのことに佐治は次のように驚愕とする。

多くの読者の記憶に残っているおれの創作が少女物一作のみとはなんと嘆かわしいことだ。

当時にしても、筒井の代表作が『時をかける少女』だけになってしまう恐怖を心のうちに感じながらも笑った部分だ。

今回の件で『残像に口紅を』も記憶に残る作品になれたことがうれしく思う。
コアなファンでない人たちの頭に残る作品をあと一冊をあげるのなら『旅のラゴス』だろうけど、まだまだたくさんあり、他の作品も読んでもらいたい。

いいなと思ったら応援しよう!