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1人で気ままにブックトーク【テーマ:認知症】


はじめに

昨今、老老介護や5080問題など、様々な介護に関する問題が報道されている。その中でも、私が心配するのは、認知症である。

 そもそも認知症とは、「脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」のことある。65歳以上の認知症患者数は、約600万人(2020年現在)と言われており、2025年には高齢者の5人に1人が認知症を患うとされている。加えて、認知症は65歳以下の若年性のものもあり、3.57万人が患っているとされている。

 しかし、そもそも認知症とはどのような病気なのだろうか。介護者はもちろん、被介護者の苦しみは何だろうか。

『アリスのままで』と忘却の不安

本作は、大学教授でもあるアリスが、若年性アルツハイマーを発症する姿が描かれる。特徴は何と言っても、認知症罹患社本人の目線から描かれている点にある。
 アリスは、少しずつ記憶がアヤフヤになっていく。仕事のことを覚えていない、約束したことをわすれている、忘れないためにメモしたことを忘れていく、子供の存在を忘れていく…
内容


 生活の中の困難、自分への苛立ち、それすら分からなくなっていく瞬間を体験的に感じるのである。
 そして、アリス目線で描かれるからこそ、周囲の苛立ちや戸惑いがより辛く感じるのである。だって仕方がないじゃないか、と言いたくなるのである。
 このアルツハイマーで少しずつ記憶が薄れていく様を描いていく描写は、素晴らしい。ぜひ読んで体感して欲しい。

 読み終えた時、本人にとって家族が家族でなくなっても、家族として縋り信じたい気持ちや共に生きたいという希望と、乗り越えられない断絶を感じながら生きていくしかないのだということを、悲しくも受け入れるのである。

『星を掬う』と被介護者の自尊心

本作は、母に捨てられた主人公が、ラジオの投稿をキッカケに、母をママと慕う女と出会い、母との再会を果たすところからスタートする。
 母との再会を果たしたところで、主人公が目の当たりにするのは、母が認知症を患っているという事実である。
 再会を果たしたことも次の日には忘れ、毎朝恐怖の表情を見せる母。徘徊・便失禁をする母。その事実に自らも戸惑いを隠せない母。
 そしていつしか母は、施設への入居を希望するが、主人公たちはそれを許さない。
内容

 まず、介護者が入居を拒み、被介護者が入居を希望するという状況が生じえることが、無知なわたしには学びだった。 
 そして、被介護者の抱える苦しみの一つとして、自尊心を削られることがあること、は大事な視点だった。
 赤子のように、身内に排泄の世話をされる。そのショックは、確かになかなかのもののはずである。自分で出来ないのだから仕方がない、脳の異常だからそれも分かってないのかもしれない、という考えは捨てて、被介護者の思いにも耳を傾けていくことも必要なのだと感じた。

『認知症世界の歩き方』と症状の実際

 実際に認知症になった人にはどのような困難があるのか、どのような認識なのか、そうでない人間が意識することは難しい。
 ポップな絵を使いながら、認知症患者本人の言葉を借りながら、日常の一コマがどのように見えているのか、わかりやすく教えてくれるのがこの一冊である。

 認知症患者の思考の流れをそのまま載せてくれているかのような文体も魅力である。ここでもやはり、認知症患者にはその人なりの考えの必然性もあるのだなぁと感じる。それは、そのまま介護者の負担の軽減には繋がらないかもしれないが、こういう形で被介護者とのコミュニケーションや支援の一助となるのではないだろうか。

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