ロードサイド・ブックストア・ブルース
2月のはじめに妻が風邪をひいた。もらった覚えはないがそのあと自分が熱で3日ほど死んだ。そうこうしているうちにバレンタインデーに妻が今度はあの流行り病に罹ってしまった。基礎疾患もあるので心配したが、幸い入院にはならなかった。しかし数日間はかなり苦しんだ。落ち着いてきた今もまだ体調があまり思わしくない。まあ気長に回復を待つしかない。オットはチョコレートをいただいただげで今のところ無事である。
ということで2月はほとんど病院と買い物くらいでこの田舎町をうろちょろしている。散歩のほかの逃避といえば本屋くらいなのだが、最近これは本屋と呼んでいいのかどんどん怪しくなっている。スーパーのついでに立ち寄れる「本屋」はよくあるレンタルショップが併設されたありふれたロードサイドのチェーン店だ。より規模が大きい書店となると市内では電車だと2駅ほど行かなければならない。
2年位前だったか、店内が全面改装された。トレカのコーナー、文房具や小物雑貨のコーナーを拡充。加えて遊具を置いたキッズコーナーが出来た。本屋としての面積が最も多いとはいえ、one of them に格下げされたことは間違いない。それでも読みたい本は必ずあるのでこれもご時世仕方がないかと足を運ぶ。
問題は週末なのだ。土日になると決まってキッズコーナーからの阿鼻叫喚が絶え間なく聞こえてくる。背の低い書棚がその境界に並べてあるだけなので、大げさでなく耳をつんざくその爆音がダイレクトに売り場に響く。まるではたきで追い払うかわりに派遣された傭兵のようだ。あげくの果てには通路まで陣地を広げる傭兵もいる。店員は一言の注意もない。早々に退散したくさせるのには十分な破壊力だ。書店はしかし一銭の利益ももたらさない週刊誌や成人雑誌のコーナーの暇つぶし中高年にはまったく効果がないことに気づいていない。
テナントのネイルサロンも、ネットで「ここでお子様を遊ばせてゆっくりお越しくください」とうたっている。「でも隣は本屋さんだから静かにね」なんて一言もない。大人が一緒にいても変わらないけれど。こんな郊外の「本屋」の哀しい姿は全国どこでも同じなんだろうな。
四分の一の自治体が「書店ゼロ」ということで、ネット書店の規制などを求める声が上がっている。書店業界は自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」とやらに支援を要望したらしいのだが。いいんですかね、このあからさまにうさんくさい名称。「街の本屋さんを食い物に」していらぬ介入をされたらそれこそ本屋は死んでしまいます。
見出しの写真は「真」さんの作品をお借りしました。ありがとうございますウサギもタヌキも来る者拒まずの本屋さんでしょうか。