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日光田母沢御用邸記念公園

奥日光からの帰途、田母沢御用邸記念公園に立ち寄る。いろは坂を「あさきゆめみしゑひもせず」とはうらはらなまま下っていくと、日光市街の手前、深い緑に囲まれて国指定重要文化財となっている田母沢の御用邸はある。20年以上も前だろうか、奥日光の紅葉狩りに出かけたもののあまりの混雑(渋滞)にここに立ち寄って「お茶を濁した」ことがあるが、ほとんど忘れてしまった。

造営時3万坪以上あった敷地は現在1万坪強と約3分の1になっているが、それでもかなりの広さだ。当地にあった民間住宅(小林家別邸)に旧紀州徳川家江戸中屋敷の一部を移築するなど増改築を重ね本邸の部屋数は合計106室もある。その多くが観覧可能になっているので、ちょっと覗いてというわけにはいかない。

劔璽の間。「三種の神器」のうち、剣と勾玉を奉安する場所。
謁見所。ドラマ「天皇の料理番」で佐藤健の秋山徳蔵は「和久井皇后」とここで対面したのか(ロケ地は別)。
「畳の縁は踏まないようご協力願います。絹が織り交ぜてあります」という注意書きがある。
漆塗りの工程。木固めから磨きまで幾重もの工程がある。

順路に従って観覧するのだが、その一部屋一部屋に立ち止まっていては時間がいくらあっても足りない。緩急をつけながら、それでも一時間位は邸内にいただろうか。折も折、というか「假屋崎省吾の世界展」というのが開かれていて、次の間に移るといきなり巨大なオブジェに驚かされたりする。

貴重な文化財であることに間違いはないのだが、思わず目を奪われるのは、贅や趣をこらした意匠などではなく邸内から見える草木の緑なのだ。廊下や2階部分のいたるところで陽の光を浴びた緑が目に入りしばし立ち止まってしまう。假屋崎氏には申し訳ないが。

中庭はいくつもある。
2階部分からの緑。
丸窓は所々に配されている。
本邸は緑に囲まれている。
見事な枝垂桜の古木。すでに青々としている。

パンフレットでは「四季折々に美しい庭園」にとどめてあるが、この文化財(園地)の価値を高めているのは広大な面積にわたる杜の樹々や草花だ。観覧で力尽きてしまい、ぐるっと囲むように散策ができるそのさわりだけでおいとましてしまったのはもったいなかった。

シャクナゲ。奥の池からモリアオガエルの大合唱が聞こえてくる。
5月下旬にはクリンソウ、6月はアヤメ、秋には紅葉が美しい。
モミノキ。

この日、ずっと頭の中をさまざまな雑念が交錯していた。樹々は黙って、今考えるべきことは何かを問いかけているようだ。緑に囲まれていると、自分の至らなさを思い知らされるような時がある。



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