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「ギエロン星獣を捕獲せよ」

夏のはじめ、友人から「ギエロン星獣を見つけたら生け捕りにせよ。ただしコストはあまりかけられない。褒美ははずむ」という指令を受ける。いくつかその手の店舗を捜索したようなのだが思わしい収穫は得られなかったらしい。

ギエロン星獣とはウルトラセブンに登場する怪獣で、その名の通りギエロン星からやってきた怪獣である。これがいわゆる侵略者ではなく、人間がこんな星(地表温度270度、酸素3%)に生物なんか存在しないだろうと新兵器の試験台に選び破壊してしまった星から復讐のために地球にやってきた怪物なのだった。この怪物に人間はその新兵器をさらに強力にした兵器を作り対抗しようとする。最終的にギエロン星獣はウルトラセブンのアイスラッガーで喉笛を切られ絶命するのだが、友人がこの指令を出した背景にはモロボシダンの「血を吐いて走り続ける悲しいマラソンだ」という兵器開発競争を評したセリフがある。(友人談)彼は愚かな愚行を繰り返すこの人間世界から一頭でも救い出したかったのかも知れない。

しばらく指令を忘れていたところ、先日、妻がかの有名なフリマアプリで友人のお眼鏡にかなうと思われるソフビの一頭を発見。すぐ友人に連絡をすると「仔細は気にせぬ。はよう連れてまいれ」との返事。急ぎ商談を成立させた。後日無事引き渡し、褒美として落花せんべいを拝領。おいしく頂戴した。翼にある傷も「アイスラッガー」をはね返した時にできたものだろうと、愛おしさも増してくれたようだ。

それにしても「フィギュア」という名称はいつころから定着したんだっけ。子供のころはだいたい「人形」「ミニチュア」と呼んでいたと思う。科学博物館だったと思うが、そこで買ってもらったブロントサウルサウルスやティラノサウルスなどのリアルなミニチュアがあって密かに自慢だった。処分しなければよかったな。今はガラスケースの中で一刀彫の鷹などさまざまな小さな置物にまじってブースカやウルトラセブンがいる。

見出しのイラストは大須絵里子さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。




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