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「鳩よ!」

1983年創刊(2002年休刊)の雑誌「鳩よ!」。椎名誠や嵐山光三郎らの昭和軽薄体の文体に憧れ、一方で石牟礼道子や本多勝一らを通して社会のひずみについて少し考えはじめた社会人1年生(カタログの編集者もどき)が、創刊するや否や飛びついた月刊誌。「雑誌の時代」をけん引したリードオフマンが平凡出版から文字通りマガジンハウスと社名を変えて、最初に世に出した雑誌です。創刊当時の表紙絵はピカソ、「現代詩手帖」や「ユリイカ」でもない<ポエムによるニュージャーナリズム>、フレーズからして攻めています。

鳩よ中身

今では危険球になるやも知れないインコースぎりぎりもつきながら、コトバから「今」を切り取ろうとする試み。誌面からは雑誌文化華やかなりし80年代の奔放な息吹が満ちています。

鳩よ中身3

創刊号の特集は「ランボーって、だれ?」。「ランボー、あんな男、ちょっといない」で話題になったサントリーローヤルのCM((久保田早紀「異邦人」!)が流れたこの年。ぬかりなくメディアによって一躍脚光を浴びた異端の詩人にスポットを当てています。

鳩よ中身2

世はコピーライター花盛り。なんちゃってコピーライターも増殖していた少々イタイところもありますが、広告が元気だった時代だったとは思います。キホンのキ、先人・片岡敏郎ももちろん登場。

創刊号では他にももう一人のアンネ・フランク、ゼルマ・M・アイジンガ-にスポットをあてるなど読み応えのある誌面で、ポップな中に1本芯を通そうとクリエイターの意気込みを感じさせます。

とはいえ、詩に関心のある層なんてたかが知れています。それまでの文芸誌にあるまじき贅沢な作りはやがて壁にぶつかり、1999年には版型変更を伴うリニューアルを余儀なくされやがて休刊へ。その間にも、デザインだけはどんどんとんがっていったという印象があります。まず言葉を伝えるのか言葉のディスプレイなのか、迷走が始まっていたのではないでしょうか。それはそれで「見せ方」の面白みを堪能しながら、結局買い続けていたのですが。

雑誌冬の時代と言われて久しくなりました。というか、もう昔のような春が来ることはないでしょう。それでも、本屋に入り月刊誌や季刊誌のコーナーに行くと、そのアプローチの巧みさに、さして興味もないのに手が伸びてしまうニッチな特集がずらりと並んでいます。それが少しでも関心をもっている分野であれば「財布を開けるな、開けたら最期だ」という心の声との格闘が始まります。一度許してしまった心には、もっとちょうだいという悪魔が巣くってしまうことは眼に見えています。「特別編集」と銘打たれるムックともなると、もういけません。季節限定のメニューにすぐ目がくらむのも根っこは同じかも知れません。

雑誌、好きです。


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