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山霧の三峯神社から秩父神社へ。
奥武蔵に宿を取り、翌朝奥秩父・三峯神社へ向かう。30年位前に訪れたと思うのだが妻も私もかなり記憶は曖昧。確かロープウェイを利用したと思うのだが(今は廃止されている)。行けば何か思い出すかもしれない。標高1000メートルを超えるところにある三峯神社までは、途中に待避所がいくつもある長いワインディングロードを登っていかなければならない。前夜の雨で霧が立ちこめフォグランプの助けを借りながらの登攀。それでも退屈なわりに必要以上の緊張を強いられる高速道路に比べればこっちの方が数段ハンドルを握っていてストレスが少ない。でもなるべく対向車はこないでね。
三ツ鳥居の前には狛犬ではなく狼が鎮座している。日本武尊の道案内をしたと言われ、また江戸時代には猪などから農作物を守る「お犬さま」として崇められた。この山犬信仰が三峯講の中核をなしている。
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参道にも霧が立ちこめ視界を遮る。が、それも深山の趣があっていい。「不思議だ、霧の中を歩くのは」妻はヘッセのこの詩が好きらしく、この日も呟いている。「暗さを知らないものは、賢くはないのだ」うん。
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極彩色の彫刻が施された本殿は、きらびやかというよりも重厚な威厳を持って現れる。本殿の前には樹齢800年という大杉があり、鎌倉の御家人・畠山重忠が奉納したという伝承から「重忠杉」と呼ばれている。
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昼近くになり霧が晴れて来た。いきなりの陽光にさらされ、体中が急速充電を受けているようだ。この空気感があるからこそパワースポットと人々は呼ぶのだろう。陽の光に力を得て高台に登ってみると、日本武尊の巨大な像が立って「おう」とでも言うように高く右手をあげている。妙齢のご婦人方が、この像をバックに自分の掌と像の掌を重ねるように写真を撮ると御利益があるとかで試行錯誤している。神話好きには常識なのかはたまた一部界隈でしか流布していない都市伝説なのか、いずれにせよその手のオマジナイはどうもピンとこない。
鳥居前の茶屋で軽い昼食。なんと創業140年も経つという。テラス席があるというので、再び漂い始めた山霧を見ながら冷たい「くるみ汁そば」をいただく。俗人にとっての至福の時間。結局30年前の記憶は呼び戻されなかった。
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三峯参拝の余勢を駆って、秩父市内まで下りて秩父神社にも行こうということになった。神社へ行くのは妻の御朱印集めと夫の歩数稼ぎ(要するに散歩)で利害が一致している。ユネスコの文化遺産にもなっている秩父の夜祭で知られる神社だ。市街地にあって境内はそう広くない。午後も3時を回って人出は少なめ。
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図らずも秩父三社のうち二社に参拝してしまった。これで次の日は残る一社に行くことがなかば決まったようなもの。残る一社は長瀞方面にある。
番外編
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