あの頃、映画館で(7)~「さびしんぼう」から「ジャスティス」
発掘された映画プログラム。20代までに観たあんな映画こんな映画、50音順のその7。
「さびしんぼう」(1985年公開)
改めて言うまでもない大林宣彦監督・尾道三部作の3作目。「既に大人になってしまったぼくから、これから大人になるだろう歳若い君たちに向けて」と大林監督が言っている。公開当時はすでに26歳の大人、まだおじさんになる気はさらさらなかった頃なのだ。尾美としのり(尾道三部作すべてに出演)演じる高校生があこがれている少女と、ある日突然現れたピエロのような女の子・・・。主演の富田靖子は現実でもまだ高校生。いとしさと切なさと心細さ(篠原涼子か!)と、そして何よりとてもあたたかい作品なのだ。
「さらば冬のかもめ」(アメリカ映画/1976年日本公開)
アメリカでの公開から3年遅れての公開。映画館で観たのはさらに3~4年遅れてどこかの名画座で。罪をおかした若い水兵を護送するふたりの海軍将校(ジャック・ニコルソンとオーティス・ヤング)、旅の途上で生れる奇妙な友情。ハル・アシュビー監督のこれは名作の一つと言っていい作品。ロードムービー好きにはたまらないのです。プログラム200円、だいたいこんなもんだった。
「私生活のない女」(フランス映画/1985年日本公開)
アンジェイ・ズラウスキーというポーランド人監督の作品。プログラムの中で音楽評論家の河原晶子氏が「これはズラウスキーの”ラスト・タンゴ・イン・パリ”だ」と言っている。観てから時間が経ちすぎてそうか、とも違うだろうとも言えない。映画監督と女優志望の女、テロリスト・・・パリを舞台に繰り広げられる愛憎劇。当時としてはかなりエロチックな内容で話題になった。「シネマスクエアとうきゅう」と表紙に印刷されている。ミニシアターの先駆けのひとつで新宿歌舞伎町にあった。
「映画上海バンスキング」(1988年公開)
オンシアター自由劇場の名作ミュージカルの映画化。1984年にも深作欣二監督で映画化されていて、こちらは自由劇場生みの親の串田和美が自らメガホンをとっている。深作作品が松坂慶子、風間杜夫、宇崎竜童など錚々たる面々を擁し正攻法で作られたのに対し、串田版は盟友・吉田日出子を軸により幻想的な仕上がり。プログラムで串田は「リアリズムってなんだろう」と問いかけているが、音楽は間違いなく1988年版の方が聞こえてくる。
「ジャスティス」(アメリカ映画/1980年日本公開)
「夜の大捜査線」のノーマン・ジュイソン監督、アル・パチーノ主演の法廷ドラマ。舞台はボルチモア、権威ばかりふりかざす判事や自殺癖のある判事がのさばり、少しでも風変わりな弁護士はすぐに査問会にかけるという土壌の中で、法に踏みにじられる被告たち。そんな司法の矛盾・不条理・腐敗に挑む若き弁護士の物語だ。原題は「そして、すべての人々に正義を」、その名の通り作品は真っ正面から偽善や悪に切り込んでいる。