若いご贔屓さん。
正月気分が終わったと思ったら、高橋幸宏、ジェフ・ベックと立て続けにこの世を去ってしまった。ご両名とも決してむさぼり聞いたというわけではないが、やはり寂しい。10代20代の頃、若気をいろいろと至らせこじらせたその傍らには必ず音楽があり、こんなふうに歳をとりたいと思う「お手本」の中には少なからずミュージシャンという職業の人がいた。
それが、50歳になるあたりから一人、また一人とこの世を去っていき始めた。柳ジョージ、忌野清志郎、大瀧詠一、西岡恭蔵や加藤和彦のような自死もある。自死というのはとりわけやり切れない。
健在の面々もその露出が少なくなった。吉田拓郎は「引退宣言」(まだカッコ付である)、中島みゆきも活動を縮小しつつある。井上陽水も引退をささやかれている。桑田佳祐はまだ元気そうだ。海の向こうに目を向けてもディランはもう80歳を超えている。ブルース・スプリングスティーンはいつまでシャウトできるのか。ストーンズはもうこないだろうな、などとどんどんうつむき加減になっていく。
朝ドラ「ひよっこ」でこんなやりとりがあった。アパートの大家である富(白石加代子)と新しく越してきた愛子(和久井映見)の会話。
愛子「今度、歌舞伎とか行こう。富さん、ね」
富「あら、そう?でも私のご贔屓の役者は皆、死んじゃったのよねえ」
愛子「何言ってんの。若いご贔屓を見つけないと」
富「あら、それもそうね、じゃ行くか」
新たな「my fave」を見つけなければ瞬く間にジジイは正真正銘の老人になってしまう。これではイケナイ、とも思うのだが鈍った感受性はなかなか呼び起こせない。6年前に一度死んだと思えば、ようやく小学一年生のはずなのだが、そういう計算にはならない。
あいみょんは悪くない、と思うがどうも乗り遅れた感が否めない。友人がギターを新たに買った。右手にはすでに絵筆を持っているので、左手で「アルハンブラ宮殿の思い出」あたりからやり直すらしい。さあ、キミ(自分ですね)はどうする?
見出し画像はストラトキャスターとひばりくん。江口寿史イラストレーション展で買ってきたポストカードであります。