オンラインツールmiroの10の活用〜「見える化」(ビジュアライズ)でオンライン会議/ワークショップはもっと楽しくなる〜前編
オンラインでの研修やワークショップが、対面の劣化版(対面でしていたことをそのままオンラインにする)ではなく、目的に合わせた場づくりの一つの選択肢だということも、だいぶ当たり前になってきたように感じる今日この頃。
一方で、オンラインツールは便利だし、ICT技術の進歩はワクワクするけれど、このような便利なツールは「私たちの幸せ」のために設計されたり進歩しているわけではないので、活用の仕方は自分でしっかり手綱を握っていく必要も感じています。言い方を変えると、「私が心地よく過ごすために」「私たちが大切な話し合いをするために」「本音で話せるために」など、目的に合わせたツールを選ぶことが大切なんじゃないかと思います。
なんとなーく使っていると、便利さや効率的なツールによってどんどん忙しくなっていったり、気づいたら、そんなに使いたいわけじゃないけど常に利用している・・・ということも起きる。
現在、私自身は、グラフィックレコーディングやグラフィックファシリテーション、付箋紙やカード、体を使った表現などのビジュアライズを活用したビジュアルプラクティスの探求に心が踊るので続けているのですが、この「見える化」する技術も一見華やかだからこそ、活用する必要がないところで無駄に活用すると混乱を招いたり、話し合いの邪魔をしてしまったりすることもあるな、と感じてきました。
目的に合わせたビジュアルプラクティスについてはこちら▼
前置きが長くなりましたが、今回、オンラインにおいて、参画型ワークショップ/研修をより豊かにする視点から、オンラインボードmiroの10の活用をご紹介します。「活用すれば場が良くなる」というよりも、「目的に合わせて必要な使い方をするとより良くなる可能性が上がる」くらいにみていただけるとうれしいです。
そもそもmiroって何?という方は、対話支援ファシリテーター玄道優子さんの記事が丁寧でわかりやすいのでおすすめです♪
<今日から使えるsmall step編>
まずは、パソコンが使えて、ある程度のITリテラシーがあれば、誰でも活用できるTipsから。参加者に表現する自由、参加のグラデーション(話すだけでなく、スタンプで表現する、見る、聴く等)を作ることで、その人らしくそこに居られる空気感をつくることにも役立ちます。時間が限られているときに、付箋紙に意見を書き出してもらうだけで、お互いの意見が目で見て共有できるだけでなく、簡単に「いいね」のレスポンスができるので、承認し合う雰囲気になるのでおすすめです。
1. 付箋紙にスタンプでリアクションをする
●活用イメージ
チェックイン、プレインストーミング、アイデア出し、意見共有などで、付箋紙に書き出した後に「いいね!」という意見にレスポンスするなど。
画像上:付箋紙をクリックすると絵文字マークから絵文字を選択できます
画面下:メニューから「stickers and Emoji」を選択して、絵文字スタンプを使用しています
実際に活用した事例の記事はこちら▼
2. イラストにスタンプでリアクションする
●活用イメージ
チェックイン、初めのアイスブレイク、現在の立ち位置を見える化して話のきっかけにする時などに活用する。
▲地図をあらかじめ用意しておき、参加者の出身地にスタンプを置いてもらうことで、どこからどれくらいの人が参加者として集まっているかを見える化。安心感を増やす、一体感を生み出すなどの効果があります。
▲某製薬会社の連続研修
チームビルディングで、初めの立ち位置の共有に活用。あるイラストをあらかじめmiroに置いておき、今の立ち位置はどこかを絵文字を移動させてそこにした理由を話てもらいます。同じ部署にいても見えている景色が異なることを示唆するきっかけなどになります。
<グラフィックレコーディングとしての活用編>
次に、はじめにビジュアライズして、その後に対話が生まれるよう促す方法を取るようなグラフィックレコーディングとしての活用に主軸を置いてご紹介します。
3. 付箋紙とのグラフィックの併用で、文字だけでは表現できない文脈やニュアンスを残す
●活用イメージ
付箋紙で出てきた意見を、付箋紙の作成者が言葉で共有する際に、付箋紙には記載されていない話し手の気持ちや想いなどをグラフィックで残す。
4. オンラインギャラリー
●活用イメージ
オンライン会議やワークショップでzoomならブレイクアウトなどを使って小グループに分かれた際、他のグループの空気感がわからなかったり、話されたことを共有するだけで何十分もかかることがある。この方法を使うと、小グループの結論だけでなく、対話のプロセスも一緒に共有できるで、より共感を産んだり、効率的に、かつ、文字だけでは伝わらない感情や空気感も共有することができる。
講演会など複数人が講演したのちに対話や議論をする場合、講演会のボリュームがあるほど、その内容を忘れていたり、受け取りきれずに議論に入ってしまう。講演会の内容を見える化しておき、手元で見られるようにしておくことで、記憶を呼び起こしやすくなる状態で議論ができる。
●Point
-小グループに分かれて、それぞれのグループにビジュアルプラクティショナーが入って見える化した際に、miroに貼り付けることで、各グループの話し合いの様子が視覚的にも効率的に共有できる。
-プロセスが見える化するので、過去、現在、そして、向かうべき方向がブレずに進んでいくことができる。
-終了後にその日の感想を付箋紙に貼ってもらう等の活用もできる
-事前に知っておいて欲しい情報を整理しておいておくこともある
▲Graphic by Sayo/Eri
同志社大学人文科学研究所ウェブサイト
第99回公開講演会「多文化な日常における防災―『いつも』と『もしも』をつなぐ」より
防災というテーマ、また、外国籍の方も参加する多様な価値観の場だったので、あらかじめ必要な情報を読めるようにmiroに用意したり、終了後に感想を付箋紙に書き込めるスペースを用意しました。
実際のmiroも公開しています
4. タブレットで描いたグラフィックをmiroに貼り活用する
●活用イメージ
患者さんのペイシェントジャーニーで共感したところにスタンプしたのち、なぜそこにスタンプをしたのか話してもらうことで、話し手が忘れていた過去を思い出すきっかけや、無意識にふたをしていた感情などが引き出されていく。
チームビルディングでの他の人の話した内容で共感したところにスタンプしたのち、なぜそこにスタンプをしたのか話してもらうことで、さらに話し手の本音が引き出されていく。等
●Point
-共感したところ、もっと深堀したいところについて他者から共感してもらうことで、より気持ちや感情を出しやすくする。
-それぞれが共感したところ(気になったところ)などを一度に見える化することで、必要な話し合いを効率よく進められる。
-時間がない時は、参加者みんなでスタンプを押すだけでも一体感が生まれる。
▲Graphic by Asumi&Eri I&Reona&Bun&Sayo
講演会の内容を聞いて、共感したところに絵文字スタンプを押して持っている様子。同じ話を聞いても、それぞれ印象的だったところが違うのだという多様な価値観が見える化されたり、どこに熱量が集まっているかが見えるようになります。
第3回のと未来会議(日英同時開催)より ※詳細は10で紹介
6. アーカイブとしてプロセスを残す
●活用方法
連続したワークショップの場合、時間が開くと、前回のことを忘れていたり、せっかく話あった以前の内容を織り込まずに話し合いが進むことも。miroに残しておくことで、プロセスが見える化するので、過去、現在、そして、向かうべき方向がブレずに進んでいくことができる。
●Point
-ワークショップや研修などの内容をスライドや写真、グラフィック、動画など、1箇所でアーカイブすることで情報迷子にならない。
-連続したワークショップやイベントの時に、前回から今回、次回への流れが掴めるようにプロセスを残していくことで、話し合いがブレない。話がそれても帰るべき軸がわかる。
▲実行委委員メンバー 玄道優子さん,出村沙代 他
石川県能登町地域推進戦略室主催ののと未来会議では、2020年度から全国の参加者に向けてオンラインでの企画を定期的に実施しています。
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前編はここまでです。
前編では、描かないビジュアライズと、描いたグラフィックをどのように活用するかといった視点でご紹介しました。後編では、描くことが直接場に影響を与えるグラフィックファシリテーションとしての活用(私のビジュアライズの仕事の8割を占めている)方法をご紹介します。また、オンラインツールの特徴を活かした複数人で1枚のグラフィックを描いていくチームグラフィックについてもご紹介したいと思います。
後編はこちら▼