【乗車記】列車旅の魅力を教えてくれた「急行はまなす」の思い出
2015年8月、東京に住んでいた私は「北海道&東日本パス」を使い、普通列車を乗り継いで北海道へ行きました。前々から一人旅に憧れがあり、この年はじめて思い立って行ったのですが、そんな私を列車旅の世界へより深くはまり込ませたのが、「急行はまなす」号との出会いでした。
■急行はまなす号とは
もはや説明の必要がないくらい、廃止から5年経った今でもファンの多い列車かと思います。青森~札幌間で上下各1本毎日運行していた、定期列車では日本最後の「急行」。車両は14系・24系客車が使われ、B寝台、カーペット車、座席車(指定席・自由席)と多様な座席がありました。
開放型B寝台をつないだ客車急行が、毎日定期列車として走り、真夜中に青函トンネルを通って本州と北海道を結んでいたということ自体、今では信じられないほど貴重な光景でした。この旅の後もはまなす号には乗りに行ったのですが、今思えばもっともっと足を運べば良かったなあと思ってしまいます。
【時刻表】※2015年度時点
(下り)青森22:18→函館1:23→長万部3:07→東室蘭4:15→苫小牧5:01→南千歳5:24→千歳5:30→新札幌5:55→札幌6:07着
(上り)札幌22:00→新札幌22:11→千歳22:36→南千歳22:41→苫小牧23:04→登別23:35→東室蘭23:52→伊達紋別0:17→長万部1:03→函館2:52→青森5:39着
【車内設備など】
座席探訪 JR北海道 14系・24系客車 夜行急行「はまなす」
http://sonicrailgarden.sakura.ne.jp/seat_pc14hamanasu.html
■初めての青森、初めての夜行列車
当時は大学3年の夏休み。どこか遠くへ一人旅に行きたいという衝動に駆られ、「北海道&東日本パス」で北海道へ行くことにしました。北海道には当時から旅人の心を惹きつける何かがありました。
小さい頃から列車に乗るのは好きでしたが、「列車が主役」みたいな旅に行くのは初めてで、「10時打ち」という概念も当時は知りませんでした。いろいろとネットで情報を調べ、乗車日の1カ月前、最寄り駅のみどりの窓口に始発前から並び、何とかはまなす号の指定券(”ドリームカー”)を入手。きっぷが手元に来ると、いよいよこれで本当に北海道に行くんだというワクワクがこみ上げてきたのを、今でも鮮明に覚えています。
当日は朝4時台の列車で最寄り駅を出発し、夜の19時ごろ青森駅に到着。一日中列車に揺られてやっと着いた青森は、なんとも言えない旅情を感じるとともに、ようやくここが北海道への玄関口なのだという高揚感もありました。
ちょうど青森ねぶた祭が開催されている期間でした。駅周辺も人々の熱気が立ち込めていて、迫力のあるねぶたをいくつも見ることができました。
■乗車、北の大地へ
「青森まちなかおんせん」で汗を流し、再び青森駅へ戻ってきました(この時以来まちなかおんせんは青森へ行った際のテッパンになってます)。ねぶた祭の臨時列車も表示されている中、左上に「急行 札幌」の文字。異彩を放って見えますが、当時は毎晩見られる普通の光景でした。
発車20分ほど前に入線。8月は多客シーズンで、B寝台・自由席が通常2両のところ3両に増結されていました。B寝台は、「増結21号車」という謎号車がつながれるのが恒例でした(笑)
急行はまなす 増結21号車 : れいるのおと
https://railnoote.blog.jp/archives/20201014.html
1号車(B寝台)と4号車(カーペット車)のエンブレム。ノスタルジーあふれるデザインです。
増結の8号車は塗装がボロボロでした…。
私が乗車する6号車「ドリームカー」。座席車ですが、もともとグリーン車で使われていたものを転用した座席で、リクライニングが135°くらいまで倒れる快適な車両です。
デッキにあったミニロビー。往年の雰囲気を感じさせます。
車内には自販機もありました。品揃えもどことなくオリジナリティがあり、乗るとついつい買ってしまってました。
青函トンネルを抜け、列車は函館に到着。初めての青函トンネルは、乗っている分には意外とただのトンネルだなと思ったのを覚えています(笑)手前にも複数トンネルがあり、「これが青函トンネル?」と何度も勘違いしてしまうのも当時のあるあるでしたね。
函館から非電化の函館本線・室蘭本線に入るため、電気機関車(ED79)からディーゼル機関車(DD51)へ牽引機を交換します。定期列車で毎晩こんな作業をしていたのかと思うと、今では本当に信じられません。
函館では機関車付け替え作業の間40分ほど停車時間があったため、駅前のコンビニで買い出しなどができました。初めての函館の街を一人真夜中に歩くのは、本当に非日常的でワクワクする体験でした。
函館を出ると同時くらいに眠りに落ちたようで、気が付くと夜が明けていました。車窓には広大な草原が広がっており、どの辺りかはわからないものの北海道に来たんだなということが直感的にわかりました。
定刻で札幌に到着。数分の接続で小樽方面の列車に乗ったため、あまり着いてからの写真は撮れませんでした。惜しいことをした…。
この後、北海道を5日ほどかけて普通列車で回り、苫小牧から大洗行のフェリーに乗って帰りました。この旅で私は完全に列車旅の魅力に取りつかれ、以後全国各地を動き回るようになりました(笑)
旅人生の原点ともいえる急行はまなす号ですが、この旅の半年後北海道新幹線の開業とともに廃止。当時は多くの鉄道ファンが新幹線を憎んだものでした(笑)私は運良く、廃止の2カ月ほど前に再度はまなすに乗ることができました。その記録も今後投稿したいと思います。