#2 パタゴニアの株主は地球
今回のPickUpは、人気アウトドアブランド「パタゴニア」創業者・イヴォン・シュイナード氏が保有株式のほぼ全て(約4,300億円!)をNPOに寄付したという記事。
シュイナード氏のメッセージは金融の常識を覆しました。
株主は絶対的存在
旧来の金融において、企業にとって「株主」絶対的な存在です。
お金が余っている人が、お金が足りない企業に株式を通じてお金を与え、恩を売るのですから、当然お金をもらった企業は恩返しが求められます。
例えば…
「株主」に恩返しをするために、配当を出さなければいけません。
「株主」に恩返しをするために、株価を上げなくてはいけません。
「株主」に恩返しの進捗を説明するために、定期的に丁寧な情報共有をしなくてはいけません。
大株主ともなれば、法律上も彼らの命令は絶対聞かなくてはいけません。
つまり、企業は基本的に「株主」に逆らえず、その「株主」が配当や株価等のお金を求めるのであれば、企業にとっての正義は短期的な稼ぎです。
地球が株主だとどうなる?
シュイナード氏は、地球環境を守る活動をするNPOに株式を寄付しました。結果として、パタゴニア社株式から生まれる年間140億円の配当や値上がり益は、全て地球環境のために使われるのです。つまり、パタゴニアが恩返しする相手は地球になったということになります。
これまでもパタゴニア社は、売上高の1%を自然環境の保全・回復に寄付する「1% for the Planet」や、持続可能な良い会社を認証する「Bコープ認証」の取得にいち早く取り組むような世界有数の環境意識高い系企業ですが、それでもシュイナード氏は「環境危機への取り組みにベストを尽くしてきたが、十分ではなかった」と語っていました。そんなシュイナード氏が最後の最後に行きついたのが、地球を株主にするという結論だったのです。株主が地球であれば、短期的な利益を求められることは絶対にありません。地球に優しい事業さえしていれば、地球は黙って見てくれているでしょう。究極のサステイナビリティ経営が実現できる資本構成と言えます。
ここに、お金が余っている人(上場企業創業者)と、お金が足りない人(地球・地球を守る活動家)の新たなマッチングが生まれており、まさに「新しい金融」と言えるでしょう。
今後、企業の株式をNPOや財団等の地球・社会のための活動をする団体に渡していく動きは増えるかもしれません。この動きは、上場企業だけでなく非上場企業にも関係のある話です。そもそも非上場企業の株式は「配当金が総合課税」「相続税の対象になる割に納税資金確保のために売却困難」等の事情もあり、保有し続けるには少々面倒な部分もあります(もちろん保有し続ける大きなメリットもありますが)。そのため、上場・非上場関わらず、地球や社会への貢献を目指す企業オーナーが、企業の株主を地球にしていく動きは今後も広がるかもしれません。
以上
参考文献
①レスポンシブル・カンパニー
社会的責任とビジネスの両立に関する深い洞察を得られる。
②社員をサーフィンに行かせよう
ュイナード氏の強い経営哲学を垣間見ることができる。
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