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サッカー選手とベンチャー投資

※当記事は投資を勧誘・推奨することを目的としておりません。

以前の記事で、新しい収入源として「投資」に目を向けるスポーツ選手が増えていることに触れた。

今回は、サッカー選手に絞って、エンジェル投資家(個人としてベンチャー企業をへの投資を行う人の総称)の顔を見てみたいと思う。

日本人サッカー選手で「ベンチャー投資」に力を最も力を入れている選手の一人は本田圭佑選手だろう。

2016年にスタートアップ企業への支援を始めて以来、すでに50社以上に投資しているようだ。

2017年に投資した大手クラウドファンディング会社のマクアケは、2019年12月に上場した。

上場時のマクアケの時価総額は326億円で、本田圭佑の保有比率が約13.71%なので、約45億円の資産価値となる。

さらに、2020年7月時点においてマクアケの時価総額は約900億円まで上昇しており、本田選手の保有比率8.89%は約80億円となっている。ここに至るまでに4.82%を売却していることとなるため、税引前で約20~40億円程度のキャッシュが本田選手の個人ファンドであるKSK Angel Fundに入っている計算になる。合計100億円以上の資産を手に入れたことになる。

2017年8月のマクアケに対する投資額は公開されていないが、当時のマクアケの企業評価が100億円だったとして本田選手の投資額は約14億円、まだ黒字決算を発表する前だったのでもう少し低い企業価値だったと考えると、ともすると10億円以内の出資額だった可能性が高い。

10億円の投資が、3年で10倍の100億円以上になったということだ。

これが本田選手がベンチャーキャピタリストからも一目置かれる一つの理由だろう。

そんな本田選手が投資を手掛けている理由をあるイベントで語っている。

「なんとか子供たちに大きな夢を持ってもらおうと(サッカースクールを)やった。でも当たり前なんですが、僕が本当にターゲットとしている子供たちは、経済的に何も解決されない。学校をやめて、親の仕事を手伝って(いる子供たちが)、このスクールに通えるわけがない。

経済的に何かコミットしないと(彼らの助けにはならない)。そういう意味で、“投資”を始めたんです。ベンチャー投資を通じて、社会課題を解決したり、(子供の貧困を助けたり)世界的に成功するような企業に投資できたらな、と。そういう思いで(エンジェルを)始めたのが3年前です」

サッカースクールの経営から、自分で解決できない社会課題に直面したことが原体験となり、ベンチャー企業を経済的に支援する「投資」という形によって多くの社会課題の解決に貢献できると考えたのだ。

スポーツ選手は、一般の会社員と違い、若くして手元に大金が入る。本田選手並みのトッププレイヤーになればなおのこと。しかしながら、どうしても事業に専念したり、ましてや事業を多角化するような時間はない

そのため、世界を変えることを志すベンチャー企業に出資し、スポーツ選手としての知名度や人脈でその成長を支えるというやり方は、至極理にかなっている

また、個人的に注目しているのは、スポーツ選手の「人を見る目」だ。

本田選手は投資先選定について下記のようなコメントをしている。

僕は人に投資する。ビジネスモデルは、むしろあまり関係ない。(起業家の)情熱を、可能な限り見る。ビジネスアイデアというのは、(ピボット=路線変更もあるなかで)どんどん変わって行くもの。だから、あまり重要視していない。僕が投資したいと思えるか。そして(起業家が)“やり切れる人なのか”を見ています

スポーツ選手は、同年代の他の誰よりもそのスポーツを「やり切る」ことを覚悟し、努力した人だ。

そのスポーツ選手は、目の前にいる経営者が持つスキルやテクノロジー等の目利きができなくても、その人の覚悟や努力を透視できる能力があるのではないか。

投資で儲かったとかどうかという話はさておき、このスポーツ選手の「人を見る目」は、今後の日本の中小企業・ベンチャー企業の再興の一つのきっかけになるのではとすら思う。

2020年3月には、サッカー日本代表の権田選手や安西選手が、手からのビデオメッセージをファンが受け取ることのできるサービス「PasYou」の運営会社である株式会社PASUに出資した。

2020年7月には、スポーツビジネスのPR・採用プラットフォーム「HALF TIME」運営のHALF TIME社が、サッカーの西大伍選手を含む23名の個人投資家から約1億円を調達したと発表した。

また、日本代表歴代2位となる試合出場数を誇る、長友佑都選手も最近投資家としてメディアに出ることが増えてきた。

長友選手は別の記事でこんなことを語っている。

企業や投資家が大きな機会として捉えることだけではなく、アスリート自身とサポーター、チームや協会など、多くのステークホルダーが組織となって動いていくことが、日本のスポーツビジネスが大きく前進することなんじゃないかと思います

投資家としての発想だけでなく、選手やチームの活動にファンや協会、多くのステークホルダーが共感することで、日本のスポーツビジネスが大きく発展する、ということだろう。

この視野の広さに正直感動したし、本当にそうだと思う。

上記ではベンチャー投資について、その成功可能性についても触れてきたが、言いたいのはこういうことだ。

選手やチームに対するファンの共感は、その選手・チームが応援するベンチャー企業やそのベンチャー企業が解決しようとている社会課題にも伝播していく

日本における競技人口・ファン人口が多いサッカーであればなおさらだ。

世界的に見ても、サッカー界のトッププレイヤーがベンチャー投資に取り組んでいる。重要なのは、彼らが資産が増えた増えてない、ということではなく、「共感の伝播によって、より多くの社会課題が解決される」ということだ。


スポーツ選手が「世の中を良くするためには何をすべきか?」ということを考え、「どこに投資するべきか?」と悩んだとき、少しでもお役に立てる人間でありたい。



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