応援されるために大切なこと
最近の生活者の変化を「応援経済」という面白い考え方で捉えた本がある。
消費者行動やブランディッド・エンターテインメントを中心に研究している新井範子氏のが書いた『応援される会社』である。
応援経済については下記のような説明がある。
「応援する」という行為は以前からあるが、近年、その応援の仕方や応援する対象が変わってきた。今までになかった新しいビジネスのシステム、例えば、「民泊」や「ウーバー」などのシェアリングエコノミーもそうだ。自分の持っているものや知識や労働を貸し合うサービスに参加して、日本に観光に来る人達の旅を応援する、というように新たなビジネスの根底にも応援が組み込まれている。
(中略)
これまで「ものを買う人」として位置付けられていた消費者が、積極的にビジネスの輪に加わるようになり、新しい価値や新しい輪を作り始めてきた。
この応援の対象は決してスポーツやアイドルだけではない。自動車やPC、家具、飲食店等、生活の中のすべてのモノやサービスが応援の対象となる。あらゆるモノやサービスに、ファンがいるのだ。
本書では、「応援される会社」になるためのポイントについて触れられているのだが、その中でも「価格競争から価値競争への転換」というキーワードが印象に残った。
日本企業はこの20~30年間、とりわけ中国や東南アジアの安い労働力を背景にした低価格製品による競争に終始してきた。あるデータによると中小企業の8割は価格競争を強いられているという。
一方で、生活者は、単純に「安い」ということだけでモノやサービスを選ばなくなってきている。価格の高い低いに関係なく、価格に対する納得感、満足感、信頼感から購入し続ける。
似たような商品と価格で勝負するのではなく、まずは独自の価値を発揮することに集中し、その後で、十分な満足度を提供できる価格設定にする、ということだ。
この「価格競争から価値競争への転換」をする上でのポイントが3つ挙げられている。
①商品開発からジャンル創造へ
②モノづくりからコトづくりへ
③工業製品から工芸製品へ
特に①の「ジャンル創造」という考え方が好きだった。
「イチローズモルト」が、ウィスキーという既存の業界がありながら、「蒸留所の個性、その年ごと、樽ごとの個性を味わう」という楽しみを新たに生み出し、独自のジャンルを確立したことが良い例だ。
「ジャンル創造」の何が好きかって、誰かが強烈に喜ぶ人の顔が明確に浮かぶからだ。というか、逆に浮かんでいなければ、ニッチな(と最初は思われるような)市場に、わざわざ勇気をもって飛び込むことなどできない。
誰かが喜ぶことが分かっているから、頑張れる。
そして、喜ぶ人の、その喜びが強烈だから、当然に応援される。
すごくシンプルだけど、なかなか巨大な売上規模のある事業を持っている大企業はなかなか取り組めない。俗にイノベーションのジレンマに陥っているうちに、最初はニッチな市場の一部が巨大産業に化け始める。
この本も記載があるが、ヤッホーブルーイングが広げているクラフトビール市場が分かりやすい例かもしれない。
本書では、生活者が様々な角度から企業を支援できる世の中において、いかに「応援される会社」になるかついて、他にも様々記載せれている。
でも、その本質は、「誰を笑顔にするか」が明確であること、それをぶらさないこと、が根底にあるのではないか。
そんなことを考えさせてくれる一冊。お勧めです。
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