スギアカツキ【たまごのはなし】第33回 親子丼を追求してたどり着いた「純系名古屋コーチン」
親子丼が好き。その想いは、年を重ねるごとに少しずつ募っているような気がします。親子丼に合う「卵」を探すのはもちろん、調味料やだしの種類を厳選するなど、日々上手においしく作りたいという願いは、段々と本気度を増していきます。そして親子丼の味を最も際立たせるのが「鶏肉」であり、その結果「純系名古屋コーチン」にたどり着いたのです。
名古屋コーチン。もしかしたら、一度ならず耳にしたことがある鶏肉のブランドかもしれません。実際に食べたことのある人も、決して少なくないのかも知れません。つまり、その名は全国区となるほど有名で、“おいしい鶏肉”の代表格としてイメージされるようになっています。でも皆さんは、本当にこの鶏肉のこと、ご存知でしょうか? そもそも鶏肉のブランドって一体……?
純系名古屋コーチンは「地鶏」。銘柄鶏とは違うのだ。
そもそも食用の鶏は、大きく3つに分類されます。短期間で大量出荷される白色の「ブロイラー」。飼料や飼育方法にこだわった「銘柄鶏(※)」。そして、在来種(明治時代までに日本で定着した品種。現在39種類が認定されている。)を改良した茶色い「地鶏」。地鶏は、JAS(日本農林規格)の厳しい規定をクリアした鶏で、全体の約1%しか流通していません。そしてもちろん、純系名古屋コーチンは、この地鶏にあたります。味の特長としては、肉質がよく締まっていて歯ごたえがあり、濃厚なコクと旨味があること。一口食べれば、その肉の上質さは多くの人が納得することでしょう。
※銘柄鶏とは
地鶏のような厳しい基準はないが、生産者が工夫を凝らしておいしさを追求した鶏肉のこと。いわゆる「ブランド鶏」とも呼ばれ、地鶏よりもリーズナブルな価格になっている。大山(だいせん)どり、日南(にちなん)どり、地養鳥、南部どりなど、多くのブランドがある。
私はこの純系名古屋コーチンのもも肉を、100gあたり400円程度で購入しています。きっと、鶏肉の中では超高級でしょうが、牛肉と比べれば知れていますし、普通の牛肉や豚肉以上の、際立った感動があるのは、間違いありません。そうです、ダントツにウマいのです!
それでもやっぱり親子丼は、“庶民の食べ物”だという人もいるでしょう。その考えを否定するつもりは、全くありません。しかしながら私にとっては、この鶏肉こそが、とびっきりの幸福、いや口福を感じることができる最強の食材なのです。もちろん、他のあらゆる地鶏(比内地鶏、さつま地鶏など)も試してみたのですが、名古屋コーチンを超える存在は、今のところ現れていません。
今日は卵の“親”について、熱く語ってしまいました。もちろん“卵”のこともお忘れなく。親子丼を作るときには、おいしい卵をたっぷり使いましょう。最後に、私流の「おいしい親子丼」の作り方を、ご紹介したいと思います。
おいしい親子丼の作り方とは?
【材料(1人分)】
・鶏もも肉(純系名古屋コーチン) …… 100g
・卵 …… 2個
・しょうゆ …… 大さじ2
・みりん …… 大さじ4
・水 …… 大さじ4
・昆布だし(顆粒) …… 小さじ1/2
・砂糖 …… 少々
・ネギ・三つ葉(刻んだもの) …… 適宜
・ご飯 …… 適宜
【作り方】
1)ボウルにしょうゆ、みりん、水を入れて割り下を作り、小口切りに切った鶏肉を漬けて下味をつける。(15~30分)
2)小さめのフライパンを用意して、漬け汁に使った割り下大さじ5、昆布だし、砂糖、鶏肉を入れて火にかける。火力は弱めの中火で、鶏肉を上下引っくり返しながら7割程度火を通す。(2分)
3)火力を少し強め、溶き卵を7割程加える。白身部分がすべて入るように注ぎ、残すのはぷるんと感のない黄身部分。真ん中から外側に向かって回し入れ、はしで軽く混ぜながら火を通していく。(3分)
4)卵の外側がある程度固まってきたら、残りの卵を中心部分に注ぎ入れ、半熟に仕上げる。(1~2分)
5)丼にご飯を盛り、出来上がった具材を乗せて、ネギや三つ葉を添えれば完成!
文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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