心とからだに寄り添う「温そうめんのフワフワ雲あんかけ」を作りませんか/スギアカツキ
時には栄養のことを忘れて。
「栄養のあるものを食べなさい」。
これは、私たちが古くから諭されているメッセージではないでしょうか。
気候や気温などの環境変化に負けない健やかな体づくりの基盤となるのが、栄養を考えたバランスの良い食事でしょう。
でも必ずしもそればかりではないと、私は思います。
栄養よりも、心地よさを感じる食事。
自分の状態に寄り添ってくれるような一皿こそ、尊い時もある。
今日はそんな気持ちを込めて、私が心穏やかに作る「温そうめんのフワフワ雲あんかけ」をご紹介したいと思います。
これは、梅雨時や夏バテしそうな時、胃腸が疲れている時に、私がよく作っているメニュー。
おだしの味や具材はその時によって変わるのですが、片栗粉でとろみをつけて、泡立てた卵白を流し入れる工程は共通です。
「温そうめんのフワフワ雲あんかけ」の作り方
使うたまごは1人分につき2個。
卵黄と卵白に分け、卵黄は別の器に移しておきましょう。
卵白は大きめのボウルに入れて、泡立て器(電動があったらとってもラク。このためだけに購入しても価値があると、私は思います)で、フワフワになるまで撹拌します。
メレンゲになる手前程度の固さでOK。
これを、温そうめんのつゆ(今回は昆布だしベース。家族のリクエストにより鶏もも肉をゴロゴロ加え、片栗粉でしっかりとろみをつけました)に、流し入れます。
卵白が加熱されることで、おつゆの中でフワフワ感がアップ。
きめの細かい雲のような感じに仕上がります。
えっ、雲を触ったことも食べたこともない?
そうですね、おっしゃる通り。
この料理は、通常“淡雪あんかけ”といわれますが、私にとっては雪よりも雲。
触ったことのある雪よりも、想像と期待がふくらむ雲のほうがイメージに近いので、そう命名することにしました。
そうめんを茹でて、雲あんかけのおつゆをたっぷり注ぎましょう。
仕上げに、ブロッコリーを添えてみました。
ネギ、ミョウガ、ショウガといった定番の香味野菜から目先を変えたい時もあるんですよね。
そしていただく時に、残しておいた卵黄を呼び寄せましょう。
お箸で卵黄を崩し、雲あんかけの上にトロ~リ垂らしていきます。
この時間、私にとっては心が穏やかになる瞬間。
なぜなら、火加減で失敗することもないですし、垂らし方は自由なのですから……。
完成です。
卵黄の黄色が、疲れた心にナチュラルなパワーを与えてくれることでしょう。
全卵を溶いてたまごとじにした時の食感や風味とは、別世界の味わいです。
最後に。
栄養のことは忘れて、と言いましたが、優しい中に実力あり。
やっぱりたまごですから、言わずもがな栄養バランスは優れていますよね。
そんなたまごへの感謝の気持ちが芽生える温そうめんを、どうぞゆっくり味わってみてくださいね。
この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げていきます。【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。
文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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