辛いことは一瞬。振り返れば笑いのネタ。
高校の卒業式から3日後、一番の親友と離れてしまうことが辛くて、何も伝えず上京した。
母が東京出身ということもあり、特別大都会にビビることもなく暮らし始めた。
とにかく雨風しのげれば…と住み始めたのは、新宿区の築80年くらいの古いアパートだ。
8畳の1Kだが風呂は無い。
トイレは和式で、天井近くにあるタンクから水を流すようなタイプで紐を引いて水を流すものだった。
こんな中心部でこんなに古いアパートってあるんだ!と10代の私は衝撃を受けたのを覚えている。
でも嫌ではなく、例えばトイレの床のタイルが花柄になってたり、台所と部屋の仕切りが襖だったり、そんなレトロな感じがお気に入りだった。
銭湯に行った経験が無かったから、毎日銭湯に通うことも経験として楽しかったし、設備がしっかりしていて露天風呂もある銭湯だったから、毎日温泉に来ているような気分だった。
神田川沿いの銭湯だったから、歌の世界を生きている!なんて思ってクスッとした。
冬は銭湯の帰りも急いで帰らないと湯冷めしてしまうし、水道にお湯が出る設備が無かったから、お湯を沸かし、それを水に加えて温くしてから使っていた。
ある日寝ている時に、バタバタバタバタ!っと右から左、左から右へと行きする音が聞こえた。
何事なのかと飛び起きた!
音が聞こえるのは天井。小さくて細かな音と、それよりは大きいくて太めな音。
実際に天井裏を見たわけじゃ無いから本当のところはわからないが、恐らく、猫がネズミたちを追いかけていた音だと思う。
何日かは気になっていたけど、そのうちその中でもグッスリ眠れるようにもなっていた。
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こうして18年前の事を書き綴ってみても、良いネタだと思う。
当時は上手くいかないこともあったりで、どちらかというと辛い毎日だったように記憶している。
若さゆえのタフな生活が出来たように思うし、この辛さがあったから、その時以上の辛さは無いと思える。
だから今、辛いと感じても何年後かにはネタになると思う。その事柄が辛ければ辛いほど、振り返れば笑えるのだ。
そのことがわかってからは、辛い、キツいと思った瞬間に、あ!良いネタになる!という発想をしてしまうようになった。
辛い、キツいと感じる時、シメシメと笑ってしまう。そうなると辛い、キツい事も楽しんでしまうのだ。