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仕事に対しての本質的なこと

今まで父の仕事に対して
そこまでの魅力を感じたことは無かった。

父は地元の新聞社の広告代理店で企画などを行っていて
大きなイベントを企画していることは知っていた。

私は幼き頃にモデルとしてチラシに掲載されてみたり
イベントの受付の手伝いをしてみたり
そんなことをしたことはあった。

帰宅時間は遅かったし、家庭の中での父が『良い父親』か…
と言われるとそうではなかったような気がする。

そんな父が苛立ったり、母と言い合いしたり、
そういうことはしょっちゅうだった。

それでも父を嫌いになったことは一度もない。
むしろ大好きだったと思う。

映画が好きなのも、飛行機が好きなのも、ご飯を食べに行くのも、
イベントの展示会に行くのも、全部父の影響だからだ。

でもそんな父と、仕事の話をすることは今までほとんどなかった。

父は、母と私へ仕事の話を積極的にすることは無かったし、
私も積極的に聞こうとはしなかった。

就職するときに
「イベント企画とかで実務経験を積むのもいいかもよ!」
とアドバイスをもらったけれど、

その時はその仕事がどういう感じかわからなかったし、
むしろ、大変そう…というイメージしかなかった。

そりゃいつも父は帰りが遅かったし、家の中はあまりいい雰囲気ではなかったし…

当時の私は、家庭からみた父の仕事のイメージしかない状態だったから
その仕事をとりあえずやってみよう、とも思わなかった。

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そこから30年以上が経ち。

今、私が何をしているかというと…

広告代理店など法人の会社様や、個人のお客様の、商品設計や集客周りのディレクションやデザインなどに携わっている。

まさか、この業界へ進むとは当時は思ってもみなかった。


そして、父と初めて仕事のことについての話をしてみたのだ。

集客周りの仕事をしていると、お客様の視点で物事を見ていく必要がある。
『ベネフィットは何か』
お客様がその商品やサービスを受けることによって、得られる未来は何なのか、その感情はどうなのか、ということを深く知ることが大切である。

そんなことを常々考えていると、
父が、大きなイベントを企画して、そのイベントが担当が変わっても、何十年も続いているということは本当に凄いことだと感じたのだ。

それを初めて父に伝えてみた。

そうしたら、

「イベント好き??イベントが好きじゃないとできない仕事かな。それに来てくれたお客様の笑顔が次のステップアップになると思ってる。」

「今は引退して違う仕事をしているけど、その仕事にも同じことが言えるかな。一流には程遠いけどね。」

と言った。

独立して自分でする仕事にしても、会社で雇われてする仕事にしても、本質はやっぱりそれが好きかどうかということだと言っていた。

父が昔、イベントの設営をしているときに、高校生の親子が訪ねてきたという。

「多分、学校の課題か何かだったのかもだけど…
イベントの仕事について聞かれたことがあるんだよね。」

ということ。
そんなこともあったなんて、本当に父のことを何も知らないんだな、と私は思った。

「その時、その子に、イベントが好き?って聞いたんだよね。
学校の文化祭でもなんでもいいんだけど、その時に自分はどこにいて何をしている?例えば、友達としゃべって何か食べているのか、裏方として支えているのか、司会をしているのか。
何が想像できる??そうすると、自分がいる立ち位置が分かる。何が好きかのやりたいことが見えてくるから、まずはそれを見てごらん、って言ったんだよね。
友達としゃべって何か食べたりしている想像ができるなら、イベントに参加するのが好きということ。本質は自分の中にあるよね、って伝えたんだ。
すごくスッキリして帰っていったから、伝えられて良かったと思ったことがあったよ。」

と言っていた。

うーん。この話、私がもっと早く聞きたかった。
そう思ったんだけど、たぶん聞いてはいたんだろうが、聞く耳までは持ってなかったような感じがする。
今だから聞けたのかもしれない。

やっぱり、その仕事が好きかどうか、ということはすごく大事だとも言っていた。

「イベントの仕事は特に予想外のことが起こってバタつくことが多々ある。寝れない、ご飯も食べれない、そんなことももちろんある。
その時に、どれだけ余裕をもって対応できるか、そこでイライラせずにいられるか、リーダーシップをどうとるか。
イベントに来てくださるお客様の笑顔を見たいから出来るし、そのワクワク、楽しいがあるから出来る仕事なんだよ。」

それは私の制作業に関しても同じことが言える。
時間通りに進まないこと、予想外のことが起こること、それは当然あることだと思う。
今までの携わった仕事でも、何ヶ月も前から準備していたことが、トップダウンで前日に全部変えることになって、時間ギリギリに間に合わせる、なんてこともあった。
それでもすごく楽しかったのを今でも覚えている。

どんな仕事であれ、その未来を想像できるか。
そしてその先のお客様の笑顔がありありと目に浮かぶかどうか。

それがやろう!という根源になるんだなと改めて父の言葉から感じる貴重な瞬間だった。

そして、自分がその父に、ものすごく憧れを抱いているんだということも改めて分かった。

改めて…

新しいプロジェクトや業務に携わるとき、自分はどんな立場が想像できるか。そのポジションでどれだけ主体的に動けるのだろうか、どれだけの熱量でできることなのだろうか。を常に感じていたいなと思う。

あと、大事なことを1つ教えてもらった。

それは
「苦しい時ほど、笑顔でいること。
そうすると軽やかに全部が回るような感覚がするんだよねー!」

って、父は語っていた。


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