「聴く」を生業にして思うこと
「キャリアコンサルタント」という職業に就いて1年、つまり「聴く」を仕事にして1年経った。
まず「聴く」には本当にパワーがある。そして世の中は「聴いてほしい」人であふれている。47歳で脱サラし、48歳で勉強を始めて、「キャリアコンサルタント」という国家資格を取得し、とにかく経験を積みたいと始めた仕事がハローワークのお仕事。かつてのわたしがそうだったように、何か資格を取得したり、勉強を始めるとき、条件によっては国から教育訓練給付金という支援を受けられるのだが、その申請をするために必ず、キャリアコンサルティングを受けなければならない。わたしはその仕事をフリーランスで始めてみた。始めたのが49歳で、現在50歳・・・半世紀生きて、いまだ新人として仕事をするとは、夢にも思わなかったよ(笑)。かつてハロワのおじちゃんに話を聴いてもらえなかったわたしが、ハロワのおばちゃんになるという運命の数奇!ご興味ある方は、よかったら↓
ハロワのおじさまのハナシを聴くの巻|sono (note.com)
「聞く」と「聴く」は違うと「傾聴」を学んだことがある人なら誰でも知っているけど、こんなに「聴く」をやり続けた1年は、50年の人生で初めてだと思う。まぁ、生業にしたのだから当たり前ではあるのだけど。
「聞く」と「聴く」では相手から出てくる情報の量が絶対的に違う。その情報は表面的には多くは「事柄」「事実」なんだけど、よくよく「聴いて」いると、その裏にあるその人の「想い」や「感情」に溢れている。そしてそれは時に「矛盾する自分」だったりもする。人って、誰かに何かを話したいときは、必ずそこには「感情」がある。何かしら心が動いてるからこそなのよね。「感動」「うれしい」「たのしい」「おいしい」「むかつく」「イラつく」「悲しい」「苦しい」・・・表現はいろいろだけど喜怒哀楽を誰かにわかってほしい、いや受け取ってほしいから発信したいし、話したいのだとつくづく思う。
1年間で、ほぼ給付金を申請するためだけにやってきた150人近くの人の話を「聴いた」。初対面のハロワのおばちゃんに話すことなんてなさそうに思うけど、どう考えたって給付金を申請するだけのためにそんな話しないでしょ!という話を驚くほどたくさん「聴いた」。仕事に会社に明け暮れて、会社役員にはなったけれど、気が付いたら家族をつくることもなく後悔している人、やらなければならないことはわかるけれど、やりたいことがわからなくなっている人、離婚して苦労して子育てをしながら目の前のできることを必死にやってきた人、自分の仕事が誰かを幸せにできているかわからなくてモヤモヤしている人、とりあえず始めた仕事が生きがいになっている人、子どもとの関係性がこじれて悩む人、別れた夫をすごく憎んでいる人、若い時に亡くなった友人の言葉を忘れられずにいる人、実は癌で病気と闘いながら仕事をしている人、障害を持つ叔母を家族ぐるみで隠して生きてきたことを後悔している人、10代で妊娠して駆け落ちまでした夫と離婚して生きていくために消防士になった人・・・本当に悲喜こもごも、人生いろいろだ。1時間以上話して「わたし、こんなことまでハローワークで話しちゃってよかったですか?」「あらやだ、なんか全然関係ないことまで喋っちゃった、わたし」という人が、本当にたくさんいた。
つまり、「初対面のハロワのおばちゃんに話すことはある」のである。
わたしがやっていることは、ただただ「聴く」だけ。もちろん相槌もうつし、相手の言ったことを繰り返したり、時にはちょっとした質問もする。でもこれ、いわゆる「傾聴」しているだけ。でもなぜか最後は1冊の小説を読み終えたような、濃厚な時間で時にはなんだかとても消耗している。「聴いてるだけ」なのに(笑)
そう、人は「聴いてくれる」人には「話したい」のだ。それが初対面のハロワのおばちゃんだったとしても。そして、たいていの人は話しているうちに勝手に悩んでいたことやモヤモヤしていたことへの答えを見つける。時には自分の矛盾に気づき、話す前は思ってもいなかったような考えを持ち始めたりもする。
これぞ「聴く」のパワーである。キャリアコンサルタントは相談者の自己決定を尊重すべしという倫理要綱がある。もちろん時にはアドバイスもする。でも決めるのは自分だ。わたしの役割は自己決定のお手伝いを「聴く」を通してほんの少ししているだけ。「聴く」のパワー絶大。
わたしのかわいい姪・甥へ。楽しいことや嬉しいこともそうだけど、怒りや苦しみやつらさや悩みも共有できる友だちを持てるといいね。そして叔母は君たちには、大事な友だちの話を「聴ける」人になってほしいとも思います。叔母も君たちの話を、それがたとえ怒りや苦しみであったとしても、聴きますよ。ただただ「聴く」だけではありますが。叔母は「聴く」を生業にしてるからね、お任せください。
あっという間の2000文字。ずっと思っていたけど、なかなかうまく言語化できなかった・・・してこなかったことを久しぶりに一気に書きました。わたしには伝えたい「想い」があるので!最後までお付き合いありがとうございます。またこちらでお会いできたら嬉しいです。