DKAやHHSの治療ゴールは血糖の正常化じゃない!(ICUエキスパート管理)
これは何度言っても、研修医やレジデントが必ずつまずく課題です。
今回はさらにエキスパートの高血糖昏睡患者の管理指針を提供します。
まず始めに、2つの病態を明確にしましょう。
①DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)の病態は、インスリンの絶対欠乏によって生じるケトン産生
②HHS(高浸透圧高血糖症候群)の病態は、高血糖や脱水に起因した浸透圧上昇
2つの病態は独立したものではなく、オーバーラップすることがしばしばです。
まずDKAから見ていきます。
高血糖を見るとみなさん過栄養状態と思われる方がいますがこれは逆です。彼らは飢餓状態と考えて下さい。正確には細胞内飢餓です。いくら血糖が高くても、この血糖を細胞内に取り込むことが出来なければ、糖質を全く摂取していないのと同じになります。血糖を細胞内に取り込む働きをするのがインスリンですね。このインスリンの絶対的な欠乏によって起こる細胞内飢餓によって、血糖に変わる代替エネルギー産生を目的とした脂肪の分解が進みケトンが生じるというという訳です。
これを踏まえると
①DKA治療のゴールは十分なインスリン投与と血中ケトンの消失
であることが分かりますね。
よって、血糖が下がってきても通常のICU患者のようにインスリンを中止したり、不適切に減量してはいけません。むしろ糖の補充を追加しながらしっかりインスリン投与を継続し、血中ケトン消失を確認するまで続けるべきなのです。血糖が正常化したら終わりではないのです。
ここで問題となるのが、どのくらいインスリンを投与しておけばいよいかということですね。血糖が下がってきた時に、インスリンが多すぎるのか、それとも適切なインスリン量だが糖の補充が足りないのかを見極めないといけません。
簡単な目安としては、0.02単位/kg/h以下にインスリンを減量しないのがポイントです。絶対的インスリン欠乏を来した患者では基礎分泌分として最低この程度の量は必要ですので、これを下回る量のインスリンではケトンの産生を抑えることができない可能性があります。また、後程記載しますが、急激に血糖を降下させないためにも治療初期からこの量で投与しておくと安全な治療を達成できます。教科書や参考書に書かれた量でインスリンのボーラスや持続投与を行うと必ずと言っていいほど急激な血糖低下が起きるので危険です。
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