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仏像は彫っておりません [0804日記]

ドリトスからタコスまで、トウモロコシに目がない。近所のパン屋が、好物をのせた新商品を売りだした。9時の焼きあがりを目指して買いに行くんだと決意して眠り、起きた。部屋着のタンクトップ・短パンで家を飛び出すと、ぐらぐらと熱風に当てられて、結局電車で向かう。夏になって、服の下に隠れていたタトゥーが姿を現すことが増えた。隣に座った子どもが、右脚のタコを不思議そうに見つめていた。老婦人は反対側の獅子舞を。

久しぶりに駆けたパン屋で会計を待つ間、いつもの店員さんと話した。何度か通っているうちに、何をして生計を立てている人間だ?という疑問が、彼の頭上に浮かんでいることに気づいた。会話の中に混ぜこまれる柔らかいジャブ。職業を明かすのが好きではないので、いつもなら「山奥で仏像を彫っています」くらいの無責任な嘘をつく。居酒屋で隣あわせた人にはこれでいい。生活圏が重なっていたので、ディアゴスティーニくらい小出しにヒントを毎回伝えていた。

トウモロコシのフォカッチャをホールで買うか、半分にしておくか迷っている間(子ども用枕くらい大きかった!)、彼は右腕のタトゥーを見て何か訊きたそうだった。目元に浮かぶ質問に気づかないふりをして、甘い桃の見分け方を話した。

帰宅してむしゃついたパンは、ホールで買って正解だった。

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