読書日記~『風が強く吹いている』

公民館が年末の休みに入る日、閉館まであと1分という所でこの本を見つけて借りました。

新書版です。今、この装幀はもうないようですね。少なくともアマゾンにはなかったです。表紙と裏表紙のイラストが面白い。今、ないとしたら、惜しい!

本屋さんで文庫本は見ていて、気になっていました。お気に入りの三浦しをんさんの本です。(知らないうちにネタバレしているかも)

ストーリー


 ある事件から陸上への道を諦めていた大学生、走(かける)と、箱根駅伝を走りたいという野望をもっている清瀬が出会い、おんぼろアパートに住む寄せ集めのような10人で本気で箱根駅伝を目指します。

本と駅伝と同時進行

この厚さ(3cm)に、一瞬ひるみましたが、お正月のほぼ2日で読み終わりました。なぜそれができたかというと、本物の箱根駅伝と同時進行で読んだからです。

1月2日の朝、読み始めました。箱根駅伝が始まり、1区だけ見て、その日は初詣にでかけました。神社でスマホを見たら、青山学院大学が逆転しているじゃないですか。「これは早く帰らなくちゃ」と急いで帰ってきました。

往路のテレビ中継を見終わって、午後から本を読み進めました。集中して。読み終わることはできずに持ち越し。

次の日、本はあと少しだったので、私は箱根駅伝の中継を見ながら本を読むという二刀流をやっておりました。何だか、本と現実の駅伝がリンクしたみたいでした。

ゴールする、だいぶ前(実際の8区くらいの時)には読み終わることができました。あとはテレビを見て応援しました。

感想です

感想はそれぞれだから、何を書いても良いでしょうか。
一言で言えば、面白かったです。楽しかった。

破天荒な場面設定に、こんなこと、あるかい?と思うのですよ。中継所でたすきを渡すときに、そんなに長く話ができないよ、とか。ナンボなんでもそれは無理でしょう、とか思ったり。

でも、竹青荘の住人、つまり部員たちや登場人物がイキイキとして魅力的なこと。清瀬ハイジ先輩、惚れる。葉菜子ちゃん、素敵。

主人公の走(かける)も、勝手に頭の中でイメージしてしてしまうのだけど、かっこいい!そして、みんなと箱根をめざすなかで、ひとりではなくなるのです。成長するのです。「走るってなんだ?」の答は?

芸術表現


文章の表現がうまくてうまくて、引き込まれます。私は感動しながら読んでいました。少しだけ引用してもいいですか。

調子はすこぶるいい。だが、走の心は凪いでいた。未来を写す魔法の水盤みたいに、波ひとつ立たず静謐に澄み切っている。

P456より

夜空を切り裂く、流星のようだ。きみの走りは、冷たい銀色の流れだ。

P472より


二つも紹介してしまった。でも、一方で「それっておかしくない?」と思うと、引っかかるのです。気にしなければ良いのにね。気持ちが上がり下がりしていました。

でも、結局、とっても面白かった。こんなにドラマティックで、人の気持ちを優しく書いてくれている。

三浦さんって、小説家ってすごいですね。当たり前だけど。巻末に謝辞が載っていますが、取材もたくさんされただろうし、公式ガイドブックを参考にしたり、それは大変だったと思います。

でも、そこに書いておられるとおり、事実と違う部分は、意図したものも、せざるものもあるとのこと。そうですよね。フィクションですから。これ、映画になったのですね。それこそ大変!

箱根駅伝も、ことさらドラマを強調したり、感動をあおったりしているという意見も聞きます。でも、それらを抜きにしても、チームで一つになり、ひたむきに走る続けるさまは、やはり気持ちを動かされますね。走る姿が美しいと思います。みんなフォームがきれいです。


裏表紙もどうぞ。


*見出し画像ありがとうございます。走る勢いを感じました。

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