海の記憶
「この夏やりたいこと」
可能性がなくても、「やりたいこと」として書いていいだろうか。
私の「この夏やりたいこと」
それは、海水浴。
海水浴に行った記憶。
どこの海だったのだろう。
いつ頃のことだったのだろう。
ひょっとしたら、子ども時代を過ごした北海道のことかもしれない。
家族と行ったのか。姉弟は一緒だったか。
よちよち歩きの長女と海に入っている写真がある。その時か。
それは、九州に帰省しているときで、海の家で休んだ。
覚えていること。
海の水は冷たい。
ヒヤッとしていて、なかなか入れない。
でも思い切ってつかると、だんだんと慣れてくる。
沖に向かって泳ぐ。
ろくに泳げないのだ。泳げないと言っていい。
もちろん、足の届くところである。
でも、沖に向かって平泳ぎのように手をかいて泳ぐと、
(ほんの数メートル)
大海原の向こうに向かって進んでいくような、
そんな爽快感があった。
気持ちが良かった。
浮き輪で浮きながら、波に揺られて青空を見上げるのも気持ちよかった。
砂浜の、焼けた砂。
熱くて歩けない。
海水浴が終わって、帰るとき。
濡れた足に砂が付いて取れない。
足は砂まみれである。
そのままビーチサンダルを履いて歩き出す。
そうすると、いつの間にか足は乾いて、砂も落ちる。
泳いだあとは、体がほてる。
かっかとほてっている。
心地よい疲労感とともに、帰って行く。
日に焼けた肌は赤く、
お風呂に入ると悲惨なことになった。
痛くてたまらない。
油に入る天ぷらのよう。
自分は子どもの頃のことを、よく覚えていない。
記憶は遠ざかる。
エッセイを書く人は、本当によく覚えている。向田邦子など、友達の髪留めの色まで書いている。きっとその時の場面が絵画や動画のように浮かんでいるのだ。音も色も匂いも。
私は断片的にしか覚えていない。だから、海水浴も、こんなありきたりのことである。
でも、気持ちよさや気持ち悪さ、熱かったこと、痛かったことなど、感覚では覚えている。
この夏やりたいこと。それは海水浴。
もう一度あの気持ちよさを味わいたいな。
きっと、もう行けないけど。
*ヘッダー、お借りしました。ありがとうございます!
後ろ姿がかわいい。
やったぜ、連続投稿終了!