映画を見ないで眠っているおっちゃん
その映画館は、50席のスクリーンがふたつある、地域密着型のような小さな映画館。見たのは『トノバン』加藤和彦の映画です。
始まる前、ベンチに座って眠っている高齢男性がいました。
グーグーと、すっかり眠りこけています。黒い毛皮のついたコートに毛糸の帽子。
開場になって、席に着くと、前の席はたぶんあのおっちゃん。
映画が始まりました。
ねているんです。その寝息がちょっと「うーーうーー」と苦しそうで、私は本当に「大丈夫か」と思いました。体調が悪いのじゃないかと。背もたれから頭が見えない。やっぱりねているんだ。
もし本当に具合が悪いんだったら、係の人を呼んでこないといけないんですけど。気になってしょうがない。シリアスな映画でなくて良かった。
そのうちに、寝息は穏やかになりました。少なくとも苦しそうではない。良かった。私は映画に集中しました。
『トノバン』って、ミュージシャン加藤和彦の映画で、結構大きな音楽がかかるんです。この中で、眠っている?
映画が終わって、みんな出てきて、しばらくしてから最後におっちゃんが戻ってきました。杖をついて、ゆっくり歩いています。ベンチにどかっと座って「フーッ」と息を吐きました。
映画館のスケジュールのチラシを手に取って見ています。また見るんですか?私は笑いそうになりました。ひょっとしたら、常連さんかも。
ま、私は心配性です。この前、夫が朝9時になっても起きてこないとき、息をしているかと部屋を覗いたくらいに心配性です。
心配性な私に、心配させないでください。
それと、お年寄りの過ごし方についても、思いました。普段どんな暮らしをしているのでしょうか。平日イオンに行くと、フードコートの1人用の椅子に座っているのは、高齢男性が多いです。本を読んでいたり、所在なげにしていたり、中にはビールを飲んでいる人も。
私もそれなりに時間があって、それなりに忙しい。
同じようなものかな。
*ヘッダー、お借りしました。ありがとうございます。
映画つながりで。