#往復書簡
言葉の力を信じる——ジル・ボム『そらいろ男爵』、鎌田實『雪とパイナップル』、アーシュラ・K・ル・グィン『オメラスから歩み去る人々』【書評】
拝啓 寒暖の差が大きく、薄暑というには朝の冷気が身にしみます。しかし、あなたからの手紙はまさに、心のなかを吹き抜けた薫風でした。 本はただ、そこにあるだけでは無力だ。でも読む人がいて、それを手渡す人がいると、大きな力になる。そんなあなたの言葉を体感したくて早速、鎌田實『雪とパイナップル』を手に取りました。そして日本人看護師ヤヨイさんのふるまい、そして表紙画のパイン缶の意味が分かり、白い雪に包まれたベラルーシの小さな町を想いました。 「ひとりの子どもの涙は、人類すべての悲