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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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#読了

毎年恒例のジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』を読む。

言っていることはハチャメチャだけど、氷点下の冬の日に、身を賭して命を救おうとするロビンとエバーに胸を締めつけられる。いや、人って捨てたもんじゃない。

1年で最も日の入りが早い。沈みゆく夕日に負けず、光を放つ人もいる。

既視の海
2か月前
11

いちむらみさこ『ホームレスでいること——見えるものと見えないもののあいだ』

朝。ロータリーの反対側にあるバス乗り場に押し寄せる高校生の波に逆らいながら駅舎に向かう。…

既視の海
5か月前
22

松永美穂『世界中の翻訳者に愛される場所』

出版社の紹介文もほとんど読まないまま、ためらうことなしに松永美穂『世界中の翻訳者に愛され…

既視の海
5か月前
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小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささやきよ!』

Webちくまに連載していたときから楽しんでいた小林エリカ『彼女たちの戦争——嵐の中のささや…

既視の海
8か月前
14

オリガ・ホメンコ『キーウの遠い空 戦争の中のウクライナ人』

2022年2月24日の、ロシアによるウクライナ侵攻から2年。いまさらながら今春、ウクライナからの…

既視の海
8か月前
14

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』を読む。 不死の身体を手に入れた「わたし」が、ひとり…

既視の海
9か月前
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早川義夫『海の見える風景』

「一年前、妻が癌になって初めて、そばにいてやりたいと思いました。しい子は3月28日に亡くなりました」 すでに1年ほど音楽活動やTwitterは休止していたが、2019年3月29日のTweetに衝撃を受けた。その1年半ののち、その最期の日々を述懐した『女ともだち ――靜代に捧ぐ』で号泣する。もう、早川義夫の新しい文章は読めないだろうなと思っていた。だが昨年末、最新のエッセイ集『海の見える風景』が出ていた。昨年12月から今年3月までの4か月間、吹きつける風と雪のなかを突き進むよ

アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』

アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』を読み終える。も…

既視の海
9か月前
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アゴタ・クリストフ『文盲 アゴタ・クリストフ自伝』

『悪童日記』三部作を読み、著者アゴタ・クリストフが、母語ではないフランス語で書くことの意…

既視の海
1年前
26

アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』

いてもたってもいられず、アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』を読む。『悪童日記』の続編であ…

既視の海
1年前
20

アゴタ・クリストフ『悪童日記』

読む本は、いつもゆくりなし。 先日来、「いま読書中」「一番の偏愛本かもしれない」という声…

既視の海
1年前
21

Luis Poirot “NERUDA: Retratar la Ausencia”(パブロ・ネルーダ写真集)

1971年、ノーベル文学賞の受賞記念としてパブロ・ネルーダの自宅で開かれた夕食会。そこに招か…

既視の海
1年前
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ロベルト・アンプエロ『ネルーダ事件』

「ネルーダ週間」も終盤にさしかかる。映画を観たり、詩集を読んだりしながら、参考文献を紐解…

既視の海
1年前
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『松本竣介 線と言葉』を読む。尾形亀之助詩集『美しい街』の挿画で知る。『運河風景』『並木道』に圧倒される。自分の眼で観たい。「戦争を描いても裸婦を描いても林檎を描いても画家の目が、厳然として永遠なものにつながってゐるか否かゞ大切だ」という言葉は文章や詩でも通じる。次は評伝を読む。